大塚商会Photo:PIXTA

注目度の高い業界や企業の最新決算を分析する連載『最新決算 プロの目』の本稿では、業績や株価が急伸中の大塚商会を取り上げる。直近では2023年12月期中間決算で初めて売上高が5000億円を超え、上り調子の株価は上場来高値を更新。一方で“謎めく”との声も少なくない同社のビジネスモデルについて、三つの強みに着目し、「急成長の仕組み」を大解剖した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

株価は上場来高値を更新
今期は4年ぶり最高益へ

 中堅・中小企業向けのオフィス機器販売などを手掛ける大塚商会の勢いが止まらない。

 好業績を背景に、特に今年に入り、大塚商会の株価はほぼ一本調子で上昇。8月24日終値は年初比54%高の6281円と、上場来高値を更新し、直近の時価総額は約1兆2000億円に上る。

 業績面では、直近の2023年12月期中間決算で、半期ベースの売上高が初めて5000億円の大台を突破。営業利益は前年同期比19%増の367億円と、上半期として過去最高を更新した。

 コロナ禍の影響を受けた20年12月期こそ減収減益となったが、一巡後は再び成長軌道に乗せ、23年12月期通期は4年ぶりの最高益更新を計画する。

 このところは、給与面でも思い切った施策が注目を浴びた。同社には労働組合がないものの、昨年7月には2000年に上場して以降初めて、全社員を対象にベアを実施。正社員の基本給を一律1万円引き上げ、平均2.72%のベアを実現した。年収も増加傾向にあり、22年12月期時点で従業員約7500人の平均年収は857万円と、待遇面の成長も著しい昨今なのだ。

 大塚商会の強みは、一口に表現すれば「中堅・中小向けソリューション」。最近では特にIT分野が拡大中だが、製品・サービスは多岐にわたり、事業構造の理解は一筋縄ではいかない。

 さらに言えば、世間的にはモーレツ営業のイメージが根強くあり、インターネット上の転職口コミサイトなどでは“ブラック企業”との書き込みも少なくないが、実態はどうなのか。急成長で一部の市場関係者から注目度が高まりつつある一方、投資家らからは“謎めいた存在”との指摘も聞かれる。実際、大塚商会の名前は知っていても、ビジネスモデルの詳細までは知らないビジネスパーソンが多いはずだ。

 次ページでは、大塚商会が持つ三つの強みに着目して大解剖。同社をカバーする証券アナリストの見解なども踏まえ、「急成長の仕組み」を分析するとともに、23年12月期の通期の売上高について、初めて「1兆円」の大台突破が見えている理由をひもといた。