注目度の高い業界や企業の最新決算を分析する連載『最新決算 プロの目』。今回は日系勢がグローバルで高シェアを誇る半導体製造装置メーカーに着目する。直近の決算では大幅な減益が相次いだが、各社の先行きをどのように捉えればよいのか。業界動向に詳しい三菱UFJモルガン・スタンレー証券の和田木哲哉シニアアナリストに、弱含みが続く半導体製造装置メーカーの回復見通しや今後の鍵を握る「二大ポイント」、有望な銘柄などを明らかにしてもらった。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
生成AIのビッグウェーブが到来
「期待大の3社」とは?
「最悪期は脱した」――。世界の半導体製造装置メーカーはこのところ、業績が悪化傾向にあった。だが、同業界に詳しい三菱UFJモルガン・スタンレー証券の和田木哲哉シニアアナリストは、東京エレクトロンをはじめとした日系勢の最新の決算を受け、冒頭のように分析する。
直近では、世界最大の半導体ファウンドリー(受託製造会社)、台湾TSMCが7月下旬に公表した第2四半期(23年4~6月期)決算で、純利益が前年同期比23%減少。四半期ベースでは約4年ぶりの減収減益となり、「TSMCショック」として市場を揺るがしたことが記憶に新しい。
しかも、東京エレクトロンの直近の2024年3月期第1四半期(4~6月)決算では、純利益が前年同期比27%減少。他にも、業界各社の第1四半期の純利益は、アドバンテスト(75%減)やSCREENホールディングス(41%減)などが軒並み減収減益となり、厳しい結果となった。
一方で世界の半導体業界は、かつてない地殻変動に直面してもいる。それは、ChatGPTに代表される「生成AIブーム」の到来だ。
高性能のデータ処理能力を備えたデータセンター向けのAI半導体需要が急増。GPU(画像処理半導体)開発で世界をリードするエヌビディアは株式市場で急速に評価を高めているが、世紀の新潮流の恩恵は、日系の半導体製造装置にも及ぶ。
なぜ、日系メーカー各社が「最悪期を脱した」と言えるのか。「生成AI」需要の恩恵は今後、どのように及ぶのか。
次ページでは、和田木アナリストの見立てに基づき、半導体製造装置各社の回復時期の見通しを明かす。業界の行く末を左右する二大キーワードとは。さらに、投資先として「期待大」の日系3社の実名を挙げ、その理由も解説する。