注目度の高い業界や企業の最新決算を分析する『最新決算 プロの目』の第1回は、総合商社を取り上げる。今期は資源バブルの一服で減益見込みだが、堅調な業績と株価に加えて、平均年収の高さやバフェット氏の投資もあり、総合商社に対するビジネスマンや個人投資家の注目度は非常に高い。近年、熾烈(しれつ)な首位争いを繰り広げている三菱商事、三井物産、伊藤忠商事を中心に、東海東京調査センター・栗原英明シニアアナリストに総合商社の第1四半期決算のポイントや中長期の戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
資源バブル一服でも利益は高水準
好発進で会社計画の上方修正期待も
総合商社の第1四半期決算にあえて点数をつけるならば、「90点」以上だろう。上方修正を発表した豊田通商は100点満点で、上位5社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)も堅調な決算だったからだ。ポジティブサプライズというよりは、順当に強かったという印象だ。
石炭など商品市況が落ち着いたことや前年出来過ぎであったトレーディング利益の剥落などで、各社ともに減益予想ではあるが、減益要因の大部分は金属・資源分野であり、前期の一過性の反動で説明がつく。資源価格が落ち着いた中でも、機械関連セグメントなど非資源分野が堅調に推移しており、ベースとなる実力値が上がっていると考えられる。
会社計画の通期の純利益に対しての進捗率も、三菱商事が35%、丸紅は34%など高い。上位5社は、期中に上方修正を発表する可能性が高いだろう。
総合商社各社の業績は、一過性要因などを除けば今期がボトムで、25年3月期は増益とみている。マクロ環境の影響はあるが、基本的に各社とも業績、株価とも中長期で期待できると考えている。
前期(23年3月期)は資源価格が高騰したことで、金属資源に強い三菱商事と三井物産の当期利益が総合商社として初めて1兆円を突破した。今期は資源価格が落ち着いたことで、伊藤忠商事を含めた上位3社の利益差は前期よりは縮小すると見ている。
次ページでは、栗原氏が三菱商事、三井物産、伊藤忠商事の3強を中心に決算の数字や、具体的な各事業の強みや課題について分析する。同氏は後継者選びなども含めた3強の中長期の戦略についても解説。中期経営計画を最も評価する商社の具体名を、その理由とともに紹介する。