北川景子演じる茶々が主人公だったら
大河史上に残る名作だった可能性
NHK大河ドラマ「どうする家康」の最終回が12月17日に放送された。北川景子演じる茶々が、炎上する大坂城で叫んだ最期の独白は迫力満点で、もし、主人公が松本潤演じる家康ではなく、茶々だったとすれば、大河史上に残る名作として記憶されたかもしれない。
茶々は秀頼の最期を見届けた後、血まみれの顔で、「つまらぬ国になるであろう」「正々堂々と戦うこともせず万事長きものに巻かれ、人目ばかりを気にし、陰でのみ嫉(そね)み、あざける」「やさしくて、卑屈な、かよわき者の国に」と、沈みゆく太陽のごとき令和日本をあざけるように吐き捨て、自害する。その壮絶なさまには、少し感動した。
「どうする家康」の平均世帯視聴率は関東地区で11.2%(ビデオリサーチ)で、2019年の「いだてん」の8.2%に次ぐ過去2番目の低さだった。
大河ドラマの視聴率で史上最高は、1987年の「独眼竜政宗」(渡辺謙主演、以下カッコ内は主演俳優)がたたき出した39.7%で、「赤穂浪士」(長谷川一夫)、「太閤記」(緒形拳)、「おんな太閤記」(佐久間良子)、「徳川家康」(滝田栄)、「武田信玄」(中井貴一)、「春日局」(大原麗子)、そして1996年の「秀吉」(竹中直人)が30%を超えていた。このころまでは、だいたい視聴率25%がヒットしたかどうかの分かれ目だった。
一方で、90年代での視聴率最低は、日野富子を主役に応仁の乱を描いた「花の乱」(三田佳子)の14.1%だった。だが、これは、なじみのない室町時代を中世人の心情に焦点を当てて扱ったことが大きい。芸術作品としての評価はいまも高く、市川新之助(現團十郎)と松たか子の大河デビュー作としても多くの人の記憶に残っている。
だが、前述の「秀吉」のあとは、毛利元就のようなローカルヒーローや、伝承すらろくに残っていない女性を無理に主人公にすることもあり、20%が攻防線になっていった。
そして、「画面が汚い」などと不評だった2012年の「平清盛」の後は、15%前後が「合格ライン」になり、さらに今回は、徳川家康という安全な主人公で、なおかつ、人気タレントをそろえたにもかかわらず、悲惨な結果となった。