私も最初はコースタイムに対して自分がどのくらいの速度で、山の難易度に応じてどれくらい時間がかかるのか、全く分かりませんでした。しかし何度も経験を重ねるにつれ、その精度は高まります。また実際に歩き出してみて、どのくらいのペースで進んでいるかを確認することで、予定通り行けるかどうかを判断できるようになります。これはプロジェクト計画における「不確実性のコーン」と呼ばれるものに近いです。
不確実性のコーンとは、プロジェクトの進行にしたがって、不確実性が変化していくことを示すモデルです。円錐形(コーン)を横にしたようなかたちから、そう呼ばれています。
プロジェクトの初期段階では不確実性は非常に大きいですが、時間が経過しプロジェクトが進行するにつれて、要件、設計、計画の詳細が明確になっていき、不確実性は減少します。コストや時間、リソースの見積もりも初期には大きな幅がありますが、プロジェクトが進行し、より多くの情報が得られるようになれば、より正確になり、ブレが少なくなります。
登山でもプロジェクトでも、計画には「安全マージン」を入れる必要があります。マージンを入れすぎると「時間内(期限内)に終わらないので無理だ」という判断になり、チャレンジがなくなってしまいます。一方で厳しすぎても、やはり計画は実現しません。適切な安全マージンを入れることが大切です。
エスケープルートの確保と
装備の最適化にも共通点
登山で緊急時の対策として重要なのが「エスケープルート」の確保です。エスケープルートとは、登山中に予期せぬ事態が発生した際、安全に下山するための代替ルートです。
スタート時点とゴール地点が同じで単純に往復するだけのピストンコースの場合は、予想以上に時間がかかったり、天候が悪化したりした場合はゴールを諦め、途中で引き返せばよいだけです。しかし、複数の峰をたどって違う場所へ下山する縦走ルートなど、スタートとゴールが異なる場合には、途中でいかに脱出するかを考える必要があります。