目指すところを定めてリーダーと
意思決定の方法を明確にする
もうひとつ、とても似ていると感じるのが「目指すところがある」という点です。登山には多くの場合、「山頂」という明確な目的地があります。プロダクトやプロジェクト、事業においても明確な目的地が必要で、最近ではそれを「ノーススター・メトリック(北極星指標)」などと呼びます。北極星は北の空で動かず、ぶれることはありません。事業などにおいても、北極星のようにぶれないゴールを目指すという考え方です。
山頂という揺るぎなきゴールがあるにも関わらず、登山でそこを目指すには一度はルートを下ったり、回り道をしたりする必要もあります。時には天候悪化で、避難小屋に退避しなければならないことや、勇気ある撤退をしなければならない時もあるでしょう。事業やプロジェクトでも同様に、北極星を目指すために遠回りすることや、一時撤退して体制を整えてから別のルートで再チャレンジすることもあります。
チームで山に登る場合、「ノーススター・メトリック」のように目指す方向性をしっかり共有し、メンバー間で同意しておく必要があります。「山頂を目指す」と一口に言っても、タイムを狙うのか、景色を見たいのか、みんなで山ごはんを食べたいのかなど、いろいろな目的があります。そもそも目的を同じくするメンバーを集めることも重要です。
先述した通り、登山計画は綿密に立てるべきですが、当日は必要に応じて柔軟に運用することも大事です。その時にもめないように、誰がリーダーかを決定し、意思決定の方法を決めておく必要もあります。YouTubeには山岳事故の振り返り動画がたくさん公開されているのですが、経験の浅さや天候悪化などと並んで「リーダーが誰か不明確」「非常事態での意思決定の方法が決められていない」といったリーダーシップの欠如が事故の原因となり、致命傷となったケースが数多くあります。
こうして類似点を通してみると、山に登ることは事業やプロジェクトなどの計画に通ずるところが多く、直感的に大変参考になると感じています。