ウィズコロナ時代への移行に伴い、再びオフィスへの出社を求める企業が増えてきた。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、「そこには“慣性の法則”が働いているだけではないか」と問う。リモートワークやハイブリッドワークにおける生産性・創造性について、及川氏はどう考えるのか。
週休3日制の議論に見る
従業員側・企業側それぞれの言い分
コロナ禍で注目されたリモートワークですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の法的位置づけが5類へ移行することもあって、出社日や出社時間を増やそうという動きも見られます。そこで改めて、リモートワークやリモートと通勤を組み合わせたハイブリッドワークを含めた、働く“場”や“時間”の意義について考えてみたいと思います。
最初に、リモートワークと同じくコロナ禍で取り入れられるようになった「週休3日制度」によって、どのような結果がもたらされたのかを見てみましょう。
英国で2022年6月〜12月、60社あまりの企業で、給与は同じままで週休3日とする制度の試験導入が行われました。参加した企業のうち約9割が今年2月、制度の継続を選択。18社は制度の恒久化を決めています。この実証実験に参加した約3300人の従業員のうち、9割が「週4日勤務(週休3日制)を続けたい」と回答。企業側も「生産性は変わらなかった」との意見が多数を占めており、従業員の福利厚生やワークライフバランスが改善して、退職が大きく減ったという結果が出ているそうです。
調査を行った非営利団体「4 Day Week Global」CEOのデール・ウィールハン氏は、「週4日勤務は、ハイブリッドワークとフレキシブルワークの両方の効果を本質的に加速すると思う」「働き過ぎは生産性の低下と幸福感の低下につながる」と述べています。
一方で、週休3日制には否定的な見解もあります。ウォール・ストリート・ジャーナルは企業側だけでなく、従業員側からも「結局、5日分の仕事を4日に詰め込んでいるだけで、労働時間の延長を余儀なくされる」「業界や職種によっては顧客の需要に応えざるを得ない」といった声が挙がっていると紹介しました。