大切なのは「自分の力で発見すること」
そんなわけで、旅先の宿でも帰った自宅でもノートをつくり、散歩に出かけてはノートをつくり……と、僕は一つの体験を繰り返し味わって、楽しんでいます。ノートづくりは、旅や散歩をよりドラマティックにしてくれるのです。
ただ、なかなかゆったり旅行したり散歩したりする時間が取れない、という人も多いでしょう。
そんな場合には、日常生活で少しだけ「余計に歩く」ということを試してみてはいかがでしょうか。たとえば、買い物に出かけるとき、いつもの大通りをやめて、内側の細い路地を使ってみたりする。すると、「ああ、こんなところで野菜を作っているのか」とか「そうか、このままずっと行くと駅の裏に出るのか」と発見したりすることがあります。なにか、世界が広がったような気がして愉快です。
旅や散歩のおもしろさ、その原点とは案外、このように「自分の力で何かを発見する」という単純な喜びにあるのではないでしょうか。旅に出たら、観光施設以外でも、おもしろいものを探しましょう。
それは、他の人から見れば、つまらないものかもしれません。しかし、「自分の力で見つけたもの」には、特別な喜びを感じるということがわかるはずです。近所の散歩でも、視線を変えれば、心動かされる景色に出会ったり、街の新しい一面を見つけたりすることはあります。
たとえば、僕はいつも使っているビルの最上階から、たまたま夕日を見て「こんな神々しい光景が身近にあったなんて」と驚いたことがあります。このような感動は一生ものの財産になります。ありふれた光景の中に、何か心動かすものを見つける――。そのために必要なのは、お金でも体力でもなく、自分の感性です。
このような感動は一生ものの財産になります。ありふれた光景の中に、何か心動かすものを見つける。そのために必要なのは、お金でも体力でもなく、自分の感性です。
僕は、何カ国も外国に行ったことがあるとか、地図を読むのが上手いといった意味では、旅や散歩の達人ではありません。しかし、海外旅行から日常生活まで、さまざまなシチュエーションで、歩くことを楽しんでいるという点では自信があります。そして、特に珍しい土地に足を運んでいるわけでも、貴重な体験をしているわけでもない僕が、これほど旅と散歩を楽しんでいる理由こそ、この本で紹介するノートづくりにあるのです。
旅と散歩は、もっとおもしろくなります。
ノートに記録する。ただそれだけで!