ニュースでよく耳にする「脱炭素」というキーワード。多くの企業ではまだ他人事のように思っているが、今後、脱炭素に取り組まない企業は生き残れなくなる。『下請け製造業のための脱炭素経営入門』を上梓した株式会社ゼロプラスの大場正樹氏に、脱炭素経営やGXへの取り組みの有効性について話を聞く。
脱炭素に取り組む中小企業は
1万社に1社しかない
脱炭素の取り組みを始める大企業が増えている一方で、ほとんどの中小企業は取り組みを始めていません。
最も有名な脱炭素の国際認証にSBT(Science Based Targets)というものがあるのですが、国内中小企業で取得している企業は2023年6月時点で356社しかありません。経済産業省によると、日本の中小企業は2021年6月時点で367万社あるので、1万社に1社しか取り組みができていないということになります。
このような数値から、多くの中小企業にとって脱炭素への取り組みはごく初期段階にあるといえます。
中小企業が脱炭素に取り組んでいない主な理由は、やる意義がよくわからないこと、自社への影響度が見えないことです。商工中金の調査によると、カーボンニュートラル進展の影響に対する方策を実施・検討する上での課題について、「規制やルールが決まっていない」「対処方法や他社の取り組み事例などに関する情報が乏しい」と回答した企業が特に多くなっています。
このことから、多くの中小企業は他社のカーボンニュートラルへの取り組みを見てから、自社の取り組みを始めようと考えているようです。
こうした状況を踏まえると、多くの中小企業が脱炭素に取り組みはじめるまでには、まだ少し時間がかかると思っています。だからこそ、今から動き出す企業は確実に先進企業になることができます。