もちろん、脱炭素に取り組むことにもリスクはあります。例えば、世界の脱炭素の潮流を進めているヨーロッパやアメリカの世論がトランプ政権のときのように「脱炭素反対」という風向きに変わると、脱炭素をやろうとしていたことがムダになる可能性もあります。

 一方で、中小企業はそもそもCO2排出量がそこまで大きくないので、脱炭素に対して必要な投資額はさほど大きくありません。脱炭素に取り組まないことで発生する取引停止リスクなどを考えると、極めて小さいリスクであるともいえます。

 脱炭素への取り組みによって、先進企業になれる時間は限られています。おそらく、2026年には多くの中小企業が動きはじめることでしょう。そのときまでに、私たちは社会から求められる脱炭素を価値として提供できる企業へと進化し、QCDCの4つの価値を重視する取引先から選ばれる未来に向けて準備を進めましょう。

中小企業が脱炭素に取り組む
3つのメリット

 脱炭素に取り組む中小企業は、次の3つのメリットが期待できます。

 1つ目は、取引先から選ばれることです。

 脱炭素社会では、製品ごとにCO2排出量が表示されるようになり、消費者がCO2排出量を気にしながら買い物をするようになります。脱炭素に取り組む企業は、そうでない企業と比べて、低カーボンの製品をつくることができるため、製品の競争力が高まります。

 また、大企業では消費者や投資家から選ばれるためにサプライチェーン全体の脱炭素を目指す取り組みが進められています。大企業は脱炭素に取り組む企業の中から下請け取引先を選ぶため、新規取引のチャンスが広がるほか、低カーボンを付加価値として提案できるため製品の値上げも期待でき、インフレによる経営ダメージを乗り越えることができます。

 2つ目は、若い求職者から選ばれることです。

 若い世代は、企業の社会貢献度や将来の可能性を重視して就職先を選ぶ傾向が見られます。企業ホームページなどで脱炭素への取り組みを積極的に宣伝することにより、環境意識が高い人からの応募が増える効果が期待できます。中長期的に若者の人口減少が確定している中、少しでも求職者から選ばれる確率を高めることが企業経営にとって重要です。

 3つ目は、政府から応援されることです。

 政府は、脱炭素に取り組む中小企業を後押しするため、最大1億円が支給される補助金など、さまざまな制度を用意しています。私たち中小企業はこうした制度を活用することで、脱炭素の取り組みを加速させることができます。