「マイクロソフトやオープンAIはタダ乗りしている」NYタイムズが提訴に踏み切ったワケPhoto:123RF

2024年も、生成AIの進化は加速するだろう。だが、学習データの“ただ乗り”をめぐって一大バトルが起きている。米ニューヨーク・タイムズが、マイクロソフトやオープンAIに対して「数百万もの記事を“違法利用”している」「損害は数十億ドル(数千億円)に達する」と訴えたのだ。AIの国際ルール策定の第一歩となるだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

NYタイムズがMSやオープンAIを提訴

 2023年12月27日、米紙ニューヨーク・タイムズはマイクロソフトとオープンAI(関連組織含む)を提訴した。その訴状の中で、マイクロソフトやオープンAIは大量かつ組織的に、同社の記事を“ただ乗り(フリーライド)”し、AI(人工知能)の学習を行ったとしている。損害は数十億ドル(数千億円)に達するとも述べている。大手報道機関によるAI企業の提訴は、今回が初めてだ。

 ニューヨーク・タイムズは、多くのジャーナリストや記者を雇い、コストをかけニュースやコラムを発信している。そして購読者は、料金を負担して記事などを読んでいる。無料記事であっても、そのコストは広告主などが負担する仕組みだ。同社は、そうした「知的財産をタダ同然でAI企業が利用した」と主張する。

 今回の提訴をきっかけに、AI学習のために記事やデータなどを利用する組織や企業は、相応のコストを負担すべきだとの論調になるかもしれない。今回の提訴がどう進展するか、AIを巡るルール策定の第一歩、さらにはAI時代の道標づくりとして大いに注目される。