台湾総統選で勝利した民主進歩党の頼清徳氏台湾総統選で勝利した民主進歩党の頼清徳氏 Photo:SOPA Images/gettyimages

今年はインドネシアやメキシコ、ロシアや米国で大統領選挙が行われる選挙イヤーだが、その先陣を切って台湾では1月13日に次の指導者を選ぶ総統選挙が行われ、蔡英文政権で副総統を務める頼清徳氏が勝利した。同じ政党が3期連続で実権を握るのは台湾では初めてとなる。総統選で民進党の獲得投票数は前回の選挙から減少し、立法委員選の議席数で国民党が第1党になったが、頼政権は最大の焦点である対中政策では蔡英文氏の路線を継承することから、今後も中台関係の冷え込みは続くことになる。(株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO/一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事 和田大樹)

中国による台湾侵攻の
ハードルは極めて高い

 頼政権は、同じ価値観を共有する米国など自由民主主義諸国との関係を重視し、台湾統一を掲げる中国の習政権には屈しない姿勢で臨むことから、蔡英文政権下で仕掛けられたような経済的・軍事的圧力が続くことになる。

 中国は台湾産のパイナップルやかんきつ類、高級魚ハタなどの輸入を一方的に停止したりするなど経済的威圧を幾度となく仕掛け、軍事的には中国軍機が事実上の境界線である中台中間線を越えたり、台湾の防空識別圏に進入したりするなど緊張が続いてきた。こういった圧力は頼政権下でも少なくとも4年間は続くと考えられ、これまで同様、中台関係には不穏な空気が漂うことになる。

 一方、現時点で台湾有事を巡るリスクに大きな変化はない。