多く聞かれることの一つは、日本企業にとって台湾市場は極めて重要で、多少のリスクはあっても現在まで積み上げてきた台湾市場からの規模縮小、撤退などの脱台湾は考えられないという声だ。そして、これに関連するが、近年対中リスク回避の代替策としてインドやASEANなど第三国へのシフトを模索する動きが見られるが、台湾に代わる国が見つからないとの声も聞かれる。

 一方、今後も中台関係では緊張感が漂うことから、脱台湾ではないものの、以前より台湾へ事業拡大・投資拡大しようという意欲が低下しているようにも感じられる。やはりその背景には有事を巡る懸念が影響しているが、台湾経済・市場の動向を地政学的観点から中長期視点で捉えていこうとする動きが見られる。

 さらには、台湾有事となれば日中関係が冷え込む恐れがあることから、台湾情勢と日中関係の行方を同時進行で見ていく必要性を訴える企業の数も増えてきていると肌で感じる。

頼政権の中国に対する
言動や振る舞いを注視すべき

 では、今後日本企業はどういった点を着目していくべきだろうか。

 極論を言えば、有事が発生するかしないか、いつ発生するかを決定するのは中国側なので、誰も完璧な答えは提供できない。しかし、一つ重要なポイントを指摘するのならば、頼政権が緊張感漂う中台関係の中でも、それをきちんと管理できるかである。

 蔡英文政権は中国に屈しない姿勢に徹し、結果、中台関係は冷え込んできたが、必要以上に緊張が高まらないよう最大限中台関係を管理してきた。

 もっと具体的に言えば、中国側を過剰に挑発するような言動や振る舞いには注意を払ってきたことから、今後は頼政権の対中国での言動や振る舞い、それに対する中国側の反応を日々注視していく必要がある。