自分の足で歩いて中米数カ国を抜け
アメリカへ入国する「走線」ルート

 その最下層が主に選ぶのが、「走線」と言われるルート。日本語では「徒歩でいくルート」といった意味になる。一番有名なのが中米から数カ国を経て、最終的にメキシコ国境からアメリカ入りするルートだ。今や、YouTubeやSNSで「走線」の経験をシェアする人も増えており、専門のコンサルさえ誕生している。

 BBC中文版は1年前に、この「走線」について詳報している。

 コロナがまだ猛威を振るっていた2021年夏にこの路線でアメリカへ脱出した、武漢出身で「90後(1990年代生まれ)」の楊金(正しい漢字は「金」が3つ)さんを取材した記事だ。もともとカメラマンで、コロナに関係する撮影をしていたところ、公安によって派出所に連行され、殴打されたことで脱出を決意したのだという。中米に渡った楊金さんが、一番つらかったと話すのは炎天下の密林地帯。雨にさらされたり、夜には気温が急に下がって寒くなったり、足には虫にかまれた痕が無数にできたり……と大変な困難の末にアメリカへ脱出した。アメリカで暮らすようになってからも配達員の仕事に就くなど苦労の絶えない楊さんだが、「ここに来たことを後悔していません。中国にいた方が後悔したでしょうね」と語っている。

 実際、米国税関・警備局によると、2023年1月~9月にかけて、米南西部国境から不法入国した中国籍の人々は2万4000人超おり、前年の11倍以上の急増となっている。