政治体制で変わる
中国人の国外流出状況

 実際、中国人の国外流出が鮮明になってきていることは国連の統計からはっきり読み取れる。

 中国への移民から中国からの移民を引いた合計純移動数は、2012年にはいったんマイナス12万4641人まで縮小しており、つまり流出は縮小傾向にあった。だが、習近平時代が始まって以降、流出増の方向に転じた。国家主席の任期を5年×2期、10年を上限とする憲法の条文を削除する憲法改正を行なった2018年には、マイナス30万近くまで急増し、コロナ禍で上海ロックダウンが起きた2022年にはさらに増えてマイナス31万を記録。そして2023年は前年を上回るスピードで流出が続いた。まさに「中国人は足で投票している*」と言ってもいい状況になっているのだ。

*足で投票する…自分が住みたい政治体制や国家の方向性によって、国内外に出たり入ったりすること。

 中国脱出の動きは資産家階級でも加速している。投資移住コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズは、2023年6月に公表したリポートで、2023年、中国の富裕層(100万米ドル超の投資可能資産を保有)の国外流出は1万3500人で世界最多になると予測した。

金持ちか、逆に貧しいか……
「潤」をする人々にもヒエラルキーがある

 そんな「潤」の形態は多種多様だ。

 日本に移住してきたばかりのメディア関係者の郭さん(仮名)は、「日本には移民国家のイメージはないが、意外に入りやすい。ただ移民に関連する情報を希望者自身で収集するのは難しく、独自の情報源が必要だ」と語る。確かに、私が接触した多くの「潤」の人々は、移民コンサルやSNSの情報で糸口をつかんだ人が多かった。

 郭さんによると、「潤」する人にもヒエラルキーがあるという。大富豪は脱出する方法がさまざまあるが、最も悩みが多いのは、ある程度資産があり、かつ今後の現地社会での収入源を考えなければならない中流階級なのだそうだ。ヒエラルキーの最下層は逆に選択肢が限られており、“バックパック一つで出て“いけばいいので、悩む必要はないと解説する。