「潤う」+「run(逃げる)」のダブルミーニング
習近平時代に増え、2022年の上海ロックダウンが後押し

「潤」とは、先進国など、より豊かな国へ移住することだ。「潤」の字を中国の発音表記(ピンイン)で表記するとrunであることから、原義の「潤う」と英語のrun(逃げる)でダブルミーニングとなっており、お金を稼ぐ(潤う)ために海外で働くというだけでなく、国内の状況悪化に伴い海外へ逃げ出すというニュアンスがある。

 本格的に流行するようになったのは、2022年に中国随一の国際都市・上海で厳しいロックダウンが実施されて以降だ。さらに、中国政治の集権化、経済減速が鮮明になってきたこともこの動きを加速させる要素となっている。また、「潤学」という言葉もあり、こちらは「潤」の考え方を体系的に学んだり、具体的な方法を研究したりすることを意味する。

 そんな「潤」の実態が垣間見えるのが、「潤学綱領」という、「潤」を実践する有志によってまとめられたサイトだ。

「潤は中国人にとって唯一の真の宗教であり、唯一の真の哲学といえる。それは物理的な救済を信じる宗教であり、その実質的な価値は、精神的な救済を追求するキリスト教徒に匹敵するものである。潤の人たちはまだ潤していない人たちを助けることを喜びとし、彼らを現実の『地獄』から救う」とうたう。

 その上で、中国15億人(筆者注:中国政府発表の人口は14億人あまり)のうち、年収12万人民元(約244万円)超が1億人ほどおり、そのうち約1000万人が「情報封鎖」を突破し、外部ネットワークにアクセスする条件を備えており、さらにそこから200万人の特権階級や既得利益者を除く800万人が潜在的な「潤」だと推計する。