“パラレルキャリア”の効果と効果最大化のために個人と組織に必要な姿勢
個人と組織の協働によるパラレルキャリアの相乗効果
ここまで、個人と組織とを分けて効果を記述しましたが、実は個人と組織が連動することで発生する相乗効果がパラレルキャリアの肝といっても過言ではありません。個人は、パラレルキャリアを通じてスキルアップし、成長を遂げる。組織は個人のスキルを本業の変革やイノベーションに活用する。こうした相乗効果です。
変化が激しい時代、自社のみの閉じた世界での組織運営では、時代に取り残されます。社外の視点を効率的・効果的に取り込み、イノベーションにつなげられる企業が、生き残れる企業となるでしょう。社外の視点を取り込む一つの有効な手段がパラレルキャリアなのです。
個人と組織がWin-Winの関係となり、相乗効果を発揮するために必要な姿勢を次に示します。
実践のために、個人に求められる「4つの姿勢」
個人に求められる姿勢の1つ目は、パラレルキャリアの実践効果を、本業に活かす意識で取り組むことです。現在の職場に不満や不安を持っている人もいるかもしれません。それでも、本業で給料をもらっている以上、本業にしっかり還元するという意識は必須です。「滅私奉公」ならぬ「活私奉公」を心がけることです。
2つ目は、所属部門や上司の理解を得ておくことです。時代は変わったとはいえ、上司、同僚の中には、別の組織での仕事やボランティア活動を行うことを快く思わないケースも存在するでしょう。法律上も社内手続き上も問題なくても、感情面での配慮は必要です。迷惑はかけていないつもりでも、しわ寄せが思わぬところで発生しているかもしれません。雑談ベースでもいいので適宜報告することも心がけましょう。
3つ目は、本業での仕事の質を低下させないことです。これが担保できないと、当初は理解を示してくれていた上司も、見方が変わってしまう可能性があります。たとえ業務時間外の活動であっても、本業あってのパラレルキャリアであることを肝に銘じましょう。
4つ目は家族の理解を得ることです。パラレルキャリアの場合、転職とは異なり、収入が下がるリスクはほとんどありません。したがって、転職時に話題となる「嫁ブロック」や「夫ブロック」の懸念は限定的です。しかし、パラレルキャリアを実践することによって、週末あるいは平日の夜、家族と過ごす時間が減少する点は注意が必要です。また、社会人大学院などの将来布石型(学び型)パラレルキャリアの場合、授業料などの費用が発生して家計にマイナスとなります。将来の展望なども含めてしっかりと説明し、理解を得ておく必要があります。