実践のために、組織に求められる「3つの姿勢」

 個人の努力だけでは、組織が享受できる効果は限定的です。個人と組織との協働作業があって初めて目指す相乗効果が発揮されます。

 組織に求められる姿勢の1つ目は、社員が、単なる小遣い稼ぎ(収入補填)の副業に向かうのではなく、個人と組織の成長につながるパラレルキャリアに取り組んでもらうように促すことです。世の中の副業解禁の流れの中で、あえて副業ではなく「パラレルキャリア推進制度の導入」を検討することも一つの案です。

 2つ目は、経営トップがパラレルキャリアの有効性を理解し、パラレルキャリア推進にコミットすることです。トップの理解とコミットメントがないと、パラレルキャリアの実践効果は、個人にとどまってしまいます。トップの理解がない場合、人事や企画部門がしっかりと効果を説明し、理解を得るところからはじめる必要があります。

 3つ目は、パラレルキャリア実践を、側面から支援する制度を設けることです。直接的な制度としては先述の「パラレルキャリア推進制度」の導入がありますが、それ以外に、「企業内キャリアカウンセリング制度」や「テーマ休職制度」が有効です。これらはパラレルキャリア推進に効果があるだけでなく、社員のモチベーション向上のためにも意味のある制度です。

 役職定年や定年再雇用に伴う待遇の低下に対して、不満を持つシニア社員は決して少なくありません。上司との対話はもちろん重要ですが、しっかり傾聴し、客観的にアドバイスできるキャリアカウンセラーの意義は大きいといえます。私自身、50代のときにキャリアで悩み、社内のキャリアカウンセラーに相談し、視界が開けた経験があります。

「テーマ休職」も考慮に値します。たとえはよくないかもしれませんが、不幸にして「働かないオジサン」化してしまっているシニア社員が、「テーマ休職制度」を使って学び直し、「働くオジサン」化したとしたら、それは本人にとってだけでなく組織にとっても大きなメリットです。私は55歳のときに「シニアテーマ休職」を活用して、社会人大学院(将来布石型パラレルキャリア)で、新たな学び(心理学・カウンセリング)に取り組みました。結果的に、人事部でのライフプラン研修の講師やキャリア相談員の仕事につながりました。