「少子高齢化は日本経済を破壊しない」と米著名投資家が考える理由Photo:PIXTA

少子高齢化が進む日本の人口動態について、多くの人々が日本の“破滅”に通じかねない大問題だと指摘する。だが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏はこのような見方に否定的だ。「人口動態によって運命は決まらない」と考える理由について、豊富なデータを基に解説した。

陳腐で時代遅れの不安に
振り回されてはいけない

 少子高齢化が進み、思わしくない人口動態は日本を破滅させるのか? “専門家”は愚かにもそう言い、記録的な低出生率と人口減少は数々の問題の兆しだと叫ぶ――労働力不足から、家族経営事業の閉鎖に至るまで。そして彼らは、岸田首相の少子化対策にほとんど希望を見いだせないと言う。

 また多くの人々が、将来は少数の健康な労働者が、多数派となる弱った高齢者の世話で確実に無一文となり、経済や株式は崩壊するに違いないなどと主張する。しかし、そのような考えはナンセンスだ! 一連の陳腐で時代遅れの不安を信じないでおこう。高齢化は、進歩への障害ではない――むしろ進歩の証しそのものだ。なぜそう言えるのか、以降、順に説明していこう。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産25兆円超の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 まず、日本で急速な高齢化が進んでいることは、言うまでもない――長い間、人口動態の終末論者が好んで用いてきた象徴的な例とさえ言える。出生率は今、1899年以来の最低水準まで沈み、人口は10年以上減少している。

 経済協力開発機構(OECD)によると、1970年には日本の65歳以上の人口の割合は7.1%だった。2000年には17.4%に増え、現在は4倍以上の約3割だ。これが、一般的にはあしきことだとされている。日本の2000年時点の「老年人口指数」(OADR、「労働人口」100人に対する65歳以上人口)は27.3だった。

 以来2倍以上に増え、今は55.4だ。お年寄り1人を「支える」労働者は2人未満。OECDは、50年までに同指数が80.7に達すると予想する。ひどい傾向をたどり、他の先進国も追随していくだろう、というわけだ。

 では、これから何をすべきなのか。実は、まず、喜ぶべき事実がある。