要するに、何にしても頑張る力のある人たちなのだと思います。一度、決めたらやり通すという意志が強いんです。地方在住者であっても、各種オリンピックや英語ディベート大会等で理IIIを目指す同学年に出会って刺激を受けて、自分も理IIIを目指そうと決めた人もいます。やはり、同世代からの刺激に勝るものはないのかもしれません。

――悩みなんてないようなスーパーマンぶりですが、スランプに陥ったり、不安が爆発したりしている人もいました。

 これまで言ったような環境に生まれ育てば、誰でも理IIIや東大に受かるわけではないことは言うまでもありません。恵まれた環境に甘えることなく、絶えず努力を重ねてきたのが理III合格者の人たちだと言ってもいいでしょう。

 彼らは口を揃えて、「自分は天才でも宇宙人でもない。ただ、努力を重ねただけ」という言い方をしますね。受験は「落ちる」か「受かる」かの2択しかないので、誰しもがナーバスになるんですが、ある意味、日本最高峰の戦いに挑む人達ですから、その不安感は受験した者にしか分からないかもしれません。

――高3では特に、膨大な時間を勉強に費やしており、誰もが、自分なりの勉強法をもがきながら、獲得していく様が見て取れます。

「自分のできることを淡々とやる、喜んだり凹んだりするくらいなら復習や新しい勉強のために時間を使ったほうがいい。自分で決めたことをコツコツと続けていれば、何かあってもうまく切り替えられるようになる」と答えてくれた人もいるように、生活のリズムを作って、集中するときは集中するといったメリハリある時間の使い方こそが極意なのかもしれません。

――たくさん食べて、睡眠時間を削らないことが大事という声も沢山ありましたが、現実的には受験直前に不眠に襲われたり、うつ気味になった人もいました。

 彼らはとても誠実で正直です。そういう負のループに陥ったときの対策も教えてくれています。解決方法として、散歩なりランニングなりで、適度な運動をして気分転換を計っている人もいるようです。

 また、家族や友人、先輩、先生に悩みを打ち明ける人もいますね。良い意味で他人を頼り、独りよがりにならないというバランス感覚にも優れていると思います。

――逆に彼らに対して心配な点はありますか?

 彼らはすごく賢いので、面接でも医者になりたい理由などもそつなくこなします。医者になりたいのならば、理Ⅲでなくてもなれるわけです。勉強ができるからという理由だけで、理IIIに挑戦し、自分がどこまで優秀なのかを示す場になっている。つまり、「理III」が自己ブランディングの材料にされていると感じることがあります。

――確かに本書では理IIIを目指した理由の一つとして、「東大なら1、2年で教養課程で様々な学問を学べる」「模試を受けたら、理IIIを狙えそうだったので」「せっかく医学部を目指すなら一番上を」いう意見を挙げている人もいます。

 必ずしも、それが悪いことではありませんが、やはり、誰もが認める優秀な頭脳集団であることは間違いないので、願わくば、人類を救うようなノーベル賞級の大きな発見やイノベーションをもたらしてほしいです。

晴れて理IIIに合格された際には、未来の後輩のためにも、 ぜひ体験談を教えてください。
『東大理III』編集委員会 連絡先:info@wasedakikaku.co.jp