たとえば、テレビ等で病気のことが出てくると、親に質問し、それに親が即座に答えてくれていたとか、両親が患者さんを治したい一心で治療方針を話し合っているのを目にしながら育ったとか、幼い頃から親の仕事部屋(病院や研究室)に行っていたなど、ごく自然に医学に興味を持つようになったと語ってくれます。やはり、親の仕事を身近に感じ、影響を受けているのでしょう。
――父親が弁護士、あるいは総合商社勤務など、裕福なご家庭のお子さんも目立ちました。帰国子女、あるいは留学体験をしている人も沢山いますね。
実は、合格者の中には離島の出身とか、親がシングルマザーでお金に苦労したとか、塾にほとんど行かずに合格したという人もいて、理IIIに至るまでの人生はバラエティに富んでいます。最近は外国にルーツを持つ生徒さんも増えています。
しかし、比較的裕福な家庭の生徒が多いのは確かです。幼い頃を英語圏で過ごし、中学受験に合わせて帰国するケースや、小中高時代に留学、あるいはサマースクールなどを利用して海外ホームステイを経験している人は少なくないです。親が連れて行く、学校のプログラムを利用する、市が主催する語学研修プログラムを活用するなどのパターンがあります。
中には、英語弁論大会や全国統一小学生テストといったイベントの副賞で海外名門大学で実施される研修に行った人もいます。変わり種で言えば、ヨーヨーの世界大会に出場したという人もいますので、必ずしも親がかりではなく、自分の力で海外に行くチャンスをゲットしているケースも散見されます。
――世界大会と言えば、ジュニアオリンピックを含め、数学、科学、生物などの各オリンピックに参加して、国際大会に出場している人も多い印象です。
合宿を通し、全国から集った仲間達と交流するのは楽しいらしく、さらに世界のツワモノたちと肩を並べることにより、異口同音に「刺激を受けた」と語ります。
また、「科学の甲子園」や「数学甲子園」に参加して好成績を挙げている人もいます。団体戦なので、戦略とチームワークが勝負だそうで、中高時代の楽しい思い出として話してくれますね。
勉強だけではない!
「一流の天才」の育て方
――それにしても、合格者は幼い頃から習い事をたくさんやっていますね
ピアノ、バイオリン、水泳、そろばん、公文、バレエ、英会話、テニス、柔道、剣道などが人気です。どれかひとつというよりも、複数の習い事を掛け持ちしているのが普通です。しかも、合格者の多くが、何らかの形で表彰されている経験をしているんですね。
特徴的なことで言えば、公文は先取りで、小学生のうちに高校の範囲を学び終える子もいますし、英会話を習いながら、英検にトライして好結果を残しているお子さんは多いです。
いずれにせよ、教育熱心なご家庭に育っているんですが、殆どの人が「親から勉強しなさいと強制されたことはない」と答えています。
親が、興味があることは即やらせていたおかげか、ごく自然に、学ぶことが当然となっていったようです。ゆえに、複数の習い事も楽しいからやるという具合で、幼い頃から活発で積極的だったと推測されますし、インタビューをしていても、素直で真っすぐに育った青年たちという印象を抱きます。
――「興味があって始める→楽しいから続ける→表彰されてよりやる気になる」という好循環があるのですね。理IIIに受かる天才たちなので、中高時代は塾と学校の勉強だけをしているイメージがありました。
意外に思われるかもしれませんが、彼らの多くが3年生で引退するまで体育会系の部活で頑張っています。文化系クラブ、あるいは委員会との掛け持ちの人も多く見られます。しかも、そのどちらかで全国大会に行ったり、表彰されたりしている。そのうえ、数種類の塾にも普通に通っているのですから、まさに、天は二物どころか三物、四物を与えているかのようです(笑)
この部活参加率の高さは、チームワークの楽しさを感じたり、部活を勉強の息抜きにしていたりする人が多いことを示していると考えます。部活をするときはしっかり部活、部活がない日にしっかり勉強するという切り替えが、生活習慣のリズムを作るうえでの軸になっていると語る人は多いですよ。
――確かに、友人たちに触発された、救われたという声も沢山ありました。
受験は団体戦とも言いますから、理IIIを目指そうという仲間が傍にいればいるほど、教え合って、助け合って、頑張ろうという気持ちになるのかもしれません。そういう意味でも、合格者のほとんどが難関中高一貫校出身者というのは頷けます。