娘は、誰とでも仲良くなりたいと思い積極的に絡んでいく。でも、その相手との間合いがわからない。だから最後は、同じクラスの子たちのみならず、担任教師にまで疎まれる。

 おおらかで自由気ままといえば聞こえはいいが、その実は、時間は守らない、友達と遊ぶ約束をしても目先の何かに気が向いてしまい、結果的に約束をすっぽかす。

 親の目から見て、わが娘ながら、これではからかいやいじめのターゲットにされても仕方がないと、合点がいくところもある。

 対して息子の方は、同年代の子どもたちに比べて体格もよく、勉強もずば抜けてできる。だから、学校の勉強がつまらなく思えるのだろう。先生が授業を始めると、勝手に解説を始める。注意をする子がいたら言葉で言い負かしてしまう。提出物の類は出すものの、時として担任教師のあら捜し的なコメント付きだ。娘とは真逆のタイプだが、行き着く先は、「周囲から浮いてしまう」ところは同じである。

公立だと浮いてしまう……
「特性」を持つ子が多い私立に絞る

 娘も息子も、これも特性と言えばそうなのだが勉強ができる。なので、このまま公立中学に進めば、学業成績では公立の難関校も狙える位置にいるだろう。しかし日々の学校生活での平常点や人物評価となると、その雲行きは怪しい。

「どうせという言い方は変ですが、公立中学校から公立の進学校を狙う場合、今や塾通いは当然です。そうなるともう、うちの子の場合、すべてにおいて“平均点”を求められる公立高校よりも私学の方が、合っているのではないかと……夫婦で話し合った次第です」

 こうしてタナカさん夫婦は、小6に進級した時点で娘を私立中学合格に定評のある塾に通わせた。息子のほうは、音大卒業生には珍しく進学校から音大へと進んだピアノ講師に、勉強も家庭教師として見てもらうことにした。

 結果、タナカさん夫婦の娘と息子は、それぞれ私立の中高一貫校へと進学し、娘は美大を、息子は音大を目指している。タナカさんは言う。

「私立の中学だと、うちの子のような特性を持つ子、もしくは診断こそ受けていないけれども特性があるだろうと思われる子、グレーゾーンの子といったクセのある子が多いのです。だから、うちの子くらいのクセなら目立たないというか。その点はよかったです」