ピアノが今、密かなブーム
実際に習うハードルは高いのか
芸術の秋。文学、アート、そして音楽――。とりわけ音楽ではピアノ、それも「大人ピアノ」が静かに深く、今、ブームだという。
その火つけ役のひとつとされているのがストピ――ストリート・ピアノだ。2017年、楽器メーカー大手・YAMAHAによる「LovePiano」プロジェクトの始動で、全国各地の主要な駅、空港、ショッピングモールにピアノが置かれ、誰でも自由にこれを奏でられるようになった。
もっとも、その誰が奏でてもいいというストピも、実際にこれを奏でているのは「かなりの熟達者」だと言われている。神戸市内のとあるストピ横にいたギャラリーのひとり、50代女性は言う。
「私もピアノの嗜みはございますが、とても、ここ(ストピ)で披露できるほどの腕前ではございません――」
大勢のギャラリーの前でピアノを弾き、喝采を浴びたい。そんな人は決して少なくないはずだ。そこまではいかなくとも、家でピアノを奏でてみたい、ピアノが家にある生活を楽しんでみたいと思う向きも、きっと数多いことだろう。
だが、実際にいざ大人がピアノを習うとなると、そのハードルは高い。まず指が廻らない。そして耳ができていない(音の聴き分けができない)……などなど、大人ならではのピアノ演奏技量習得の困難が立ちはだかる。
そんな「大人ピアノ」ならではの疑問や知っておいたほうがいいことあれこれを、今関西クラシックピアノ界で注目の若手ピアニスト・大倉卓也氏に訊いた。
子どもの頃からまったく音楽に親しんでいない大人が、いざピアノを始めるとなると、やはり独学では難しい。そこで重要なのが「ピアノの先生(ピアノ講師)選び」だ。
そもそもピアノ講師の多くは子どもの頃から、それも3歳、4歳からピアノを始めて、芸術大学、音楽大学を卒業したいわば音楽エリートたちである。音符ひとつ読むのも怪しい大人初心者の気持ちを、理解し難いところもあるだろう。