能登地震で「アラブの人々」が悲しむ意外なワケ、被災地と世界をつなぐ“光”とは?日本のマンガコーナーが盛り上がるドイツの書店(著者撮影)

能登半島地震は甚大な被害をもたらし、輪島市の朝市通りにあった永井豪記念館が全焼した。実は、永井豪ファンの聖地の全焼に落胆したのは、日本のアニメファンだけではなかった。数々の英字メディアもこれを伝えたが、アラブニュース・ジャパンはその筆頭だった。(「China Report」著者 ジャーナリスト 姫田小夏)

アラブで圧倒的な人気を得た永井豪氏のアニメ

 1月2日、アラブニュース・ジャパンは、「X」に投じられたダイナミックプロ(永井豪氏らのマネジメント会社)の公式コメントを紹介しつつ、痛ましい被害の現状を伝えた。アラブニュースとは、1975年に誕生したサウジアラビア初の英語新聞で、その後2019年にアラブニュース・ジャパンが創刊された。

 アラブニュース・ジャパンのロゴは、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『UFOロボ グレンダイザー』の3部作などで知られる、石川県輪島市出身の漫画家・永井豪氏の手描きによるものだという。

 アラブ世界で圧倒的な人気を集めたのは、『マジンガーZ』以上に『UFOロボ グレンダイザー』(以下、グレンダイザー)だった。日本で放送されたのは1975~77年だったが、1980年代には国境を越え、レバノンのテレビ局を皮切りに、シリア、ヨルダン、イラク、エジプト、クウェートなど中東一帯で『GOLDORAK』という名称で放映された。

 シリアで生まれ育ち、その後カナダに移民したカナダ国籍の実業家エリックさん(仮名、46歳)は「グレンダイザーは中東の子どもたちにとってのヒーローで、私自身も無我夢中でこれを見ていた」と話す。

 宗教色の強い中東で放送に前向きだったのは、「ベガ星連合軍に追われて地球にやってきた主人公がロボットに乗って戦う」という単純なストーリーが、「祖国防衛、敵に立ち向かうという価値観」(アラブニュース・ジャパン)に合致したからだとも受け止められている。

 その一方でエリックさんは「当時はディズニーなどの米国のアニメも放送されていましたが、日本のアニメには正義と勇気、そして強い愛を感じた」と回想する。