新NISAで自滅する「敗者」に足りない3つの要素…知恵、体力、あと1つは?『インベスターZ』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の投資マンガ『インベスターZ』を題材に、経済コラムニストで元日経新聞編集委員の高井宏章が経済の仕組みをイチから解説する連載コラム「インベスターZで学ぶ経済教室」。第54回は、新NISAを始めるにあたって知っておきたい投資の名言・格言を紹介する。

『敗者のゲーム』著者の名言とは?

 道塾学園創業家の令嬢・藤田美雪は桂蔭学園の女子投資部のメンバーに米投資家ウォーレン・バフェット氏の投資哲学を熱心に説く。バフェット氏という「巨人の肩」に乗ることで、原則と信念を持った投資への道が開けるという。

 新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、投資について勉強しようと考える人は多いだろう。最初の一歩としてお勧めしたいのが、古今東西の大投資家の名言を読むことだ。

 経済や金融商品、年金制度などについて基礎や理論を学ぶことは無論、大切だ。だが、投資やマーケットは予想不能で理屈通りにいかない。もうかっても損しても心理が揺さぶられる心理ゲームでもあり、経験がものを言う。

 美雪が「巨人の肩に乗る」と表現するように、私は名言や相場格言はある種のショートカットだと考える。先人が苦闘の末にたどり着いた境地の片鱗に触れて、自分自身の投資スタンスの軸にできる。

 バフェット語録は作中でも紹介されているので、ここではバフェット氏以外の私のお気に入りの名言・格言をいくつか紹介しよう。

 まずはインデックス投資のバイブル『敗者のゲーム』の著者チャールズ・エリス氏から。「運用成績を上げるには3つの方法がある。知恵の勝負、体力の勝負、そして忍耐力の勝負である」。投資がいかにサイコロジカルな営みかが分かる。

「人はリスクを認識する自分の能力を著しく過大評価する一方、リスクを避けるためになすべきことをひどく過小評価する」。こちらは当代屈指の賢者、米オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者ハワード・マークス氏の言葉。

読み人知らずの投資の格言「ブタは…」

漫画インベスターZ 7巻P29『インベスターZ』(c)三田紀房/コルク

 マークス氏の「投資で一番大切な20の教え」は、投資の本質であるリスクにいかに向かい合うべきか素晴らしい知見にあふれている。

「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑とともに育ち、楽観の中で成熟し、陶酔とともに消えていく」という大投資家ジョン・テンプルトンの定番の金言も頭に入れておきたい。

 年明けから急騰する日本株に当てはめれば、今は「懐疑」から「楽観」に移るステージに位置しているのではないだろうか。総強気の「陶酔」の気配が漂い出したら要注意だ。

 最後は読み人知らずの英語の格言で締めくくろう。

“Bulls Make Money, Bears Make Money, Pigs Get Slaughtered.”

 日本語に訳すれば「強気(ブル)はときに勝つ、弱気(ベア)もときに勝つが、豚(貪欲)は屠られる」とでもなるだろう。

 強気派も、弱気派も、利益を出せるかどうかは時の運。だが、欲をかく投資家には常に悲惨な末路が待っている。少しでも利回りの高い商品を買いあさる“Yield Hog”(利回り豚)という表現と並んで、無理なリターンを追い求める危うさをうまく示している。

 バフェット氏の名言については最近、ベテランファンドマネジャーの平山賢一氏と対談する機会があったので、ご興味があればそちらをご覧いただきたい。

漫画インベスターZ 7巻P30+P31『インベスターZ』(c)三田紀房/コルク
漫画インベスターZ 7巻P32『インベスターZ』(c)三田紀房/コルク