ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

トークのプロとして活躍する筆者いわく、批判的な内容を冗談っぽく言う「エスプリトーク」は、センスが問われる上級者向けの雑談術なので、取り扱いには注意が必要。そこでおすすめなのが、某新聞に掲載されている名物コラムの偉人と話し相手を結び付ける「私の履歴書トーク」だという。※本稿は、桑山 元『すぐに使える!おもしろい人のちょい足しトーク&雑談術』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

批判をジョークに乗せる「エスプリトーク」
特効薬だが劇薬でもあるのでご注意を

 最初にお伝えしておきます。これは少々上級編なので、自信がない方は読み飛ばして下さい。

 少し批判的なことや風刺的なことをそのままストレートに言うのではなく、ジョークで言うことを「エスプリ」「ウィット」と呼びます。エスプリはフランス語、ウィットは英語で両者の意味としての違いは、ほとんどありません。

「○○党は、なかなか一枚岩になれないね」
「多様性の時代を意識しているんですかね」
「あそこの会社は社長のワンマン経営だからな」
「それで新入社員がやたら降車ボタンを押したがるんですね」

 注意すべきポイントは、批判的なことや毒を含むので、言い方はなるべくソフトにすることです。別にお笑い芸人ではないので、そこで爆笑を狙いに行く必要はありません。わざわざ敵を作るようなエッジの効かせ方はお勧めしません。

 また、ソフトな言い方にしないと、主義主張や信条のように聞こえてしまう場合もあります。ただでさえ、政治・宗教・野球(応援しているスポーツチーム)の話はタブーとされています。風刺的な発言は、これらの要素が絡んでくることが多いため、特に注意が必要なのです。

 演劇や演芸も、元々は為政者を皮肉ったり批判したりする風刺的な意味合いが強いものでした。そのまま批判すると取り締まりの対象になるため、架空の物語(フィクション)という逃げ道を作って、庶民のガス抜きをしていました。しかし、現代ではその意味合いもだいぶ薄まってきているのが現状です。

 では、何故わざわざそんなリスキーなことをするのでしょうか。

 それは、この手の「ブラックユーモア」系は、好きな人は本当に好きなのです。

 また、その人たちは自分たちが少数派であることを自覚しています。ですから、センスが合うと一気に心理的な距離が近くなるのです。しかし何度も繰り返しますが、これは特効薬でもありますが劇薬でもあります。

 風刺的なことを言う時の鉄則は「強い者を皮肉る」ことです。弱い者を皮肉ったら、それは単なる弱い者いじめです。マイノリティの方々や社会的弱者に矛先を向けては絶対にいけません。

 また、人の生死に関わることや、差別的な発言にも細心の注意を払って下さい。皮肉の中にも礼儀ありです。

漫画:本書より漫画:本書より
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