2022年度の小中学校における不登校者数は過去最多の29万9048人、小中高校などで判明したいじめ件数も過去最多の68万1948件になっています。不登校は個人の問題ではなく社会問題です。本連載では、20年にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。「不登校」という事象について考えるときに、本人へのケアという個人に着目した視点と、教育環境との相性や教育制度など、個人を苦しめている社会の側に視点をおいた考え方など、幾つかの視点があります。ここでは個人に着目した考え方の一つを本書から紹介します。
高校だけでもさまざまな選択肢がある
高校には、全日制、定時制、通信制という3種類の課程があります。
どの課程の高校を卒業しても、取得できる資格は同じ「高校卒業資格」。ただし、授業の方法や単位の取り方など、仕組みや特色は異なります。
・全日制…平日の朝から夕方にかけて授業を受ける、いわゆる一般的な高校です。
・定時制…「夜間定時制」「昼間二部定時制(午前・午後)」「三部制(午前・午後・夜間)」があり、自分の生活スタイルに合う学校を選ぶことができます。
・通信制…毎日通学する必要がなく、自宅学習を中心に学びます。
また、高校を卒業するために必要な単位数は74単位以上。週あたり1回50分の授業を1年継続すると1単位になります。
これをどのように取得するかによって、高校は「学年制」と「単位制」に分かれます。「学年制」は1学年で取得しなければならない単位数が決まっており、取得できなければ留年になりますが、「単位制」はその縛りがなく、マイペースで単位取得できます。
どの高校を卒業しても「高校卒業資格」は同じですが、高校に入学するための入試制度の違いをおさえておくことも重要です。
全日制の公立高校でも、不登校の子や発達の特性を持つ子に配慮し、中学卒業時の学力や出席日数が足りなくても進学できる高校が全国で増えています(本書P232参照)。
また、定時制や通信制でも、独自の教育をしている個性ある高校が多くあります。大学進学のみならず、就職や専門学校への進学を手厚くサポートしてくれるところもあります。
高校以外の進学先は?
さらに、中学卒業者を対象とした教育機関として、実践的な職業教育を行う高等専修学校もあります。全国に約400校あり、美容師、建築士、自動車整備士、介護福祉士、調理師などの資格を取れるように学ぶコースもあります。すでになりたい職業が見えてきている子や、早く社会で働いてみたいという子にはおすすめの進路です。
障がいや病気を抱えた生徒が学ぶ学校としては、特別支援学校の高等部があります。教科学習のほか、コミュニケーションやソーシャルスキルも学ぶことができます。子どもそれぞれの特性に応じて手厚くサポートを受けられる点や、障がい者雇用枠などを活用した就労支援に強いというメリットがあります。
いずれも、高卒資格は得られませんが、大学への入学資格はあり(高等専修学校は「大学入学資格付与指定校」のみ)、学び直したい時にも、対応できるようになっています。
*本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。