1970年代に連続企業爆破事件を起こし、社会を震撼させた過激派組織「東アジア反日武装戦線」のメンバー、桐島聡容疑者(70)を名乗る男が都内の病院で見つかり、その後死亡した。いまだ捜査が進展中であり、身分偽造の実態など判明していない事項が多い。本稿では、非公然活動家がいかにして我々の日常生活に潜むのか、彼らの教本『腹腹時計(はらはらとけい)』や過去の摘発例をヒントに、警視庁元公安部捜査官で治安情勢に詳しい専門家が解説する。(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事 稲村 悠)
半世紀に及ぶ逃走劇を
自身の手で終わらせたのか
現時点までの報道によれば、桐島聡容疑者を名乗る男は日本国内で数十年にわたり土木工事会社に住み込みで勤務していた。「ウチダヒロシ」という偽名を使い、周囲は、指名手配された「桐島聡」だとは全く気付いていなかったという。男は、末期がんで、最後は本名で迎えたいと話していたが、入院先の病院で亡くなった。
仮に、男が「韓国産業経済研究所」のビル爆破事件に関与した桐島聡であると確定した場合、男が話している「最期は本名で迎えたい」「最期は日本が良かった」という理由で、半世紀にも及ぶ逃走劇を自身の手で終わらせたことになり、無念の一言だ。