逮捕当時の青葉真司被告(2020年05月撮影)逮捕当時の青葉真司被告(2020年05月撮影) Photo:SANKEI

36人が死亡し、32人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件で殺人と殺人未遂、現住建造物等放火、建造物侵入、銃刀法違反の5つの罪に問われた青葉真司被告(45)の判決公判が1月25日午前10時半、京都地裁で開かれる。最大の争点は刑事責任能力の有無や程度。弁護側は最終弁論で「妄想性障害の影響で心神喪失か耗弱だった」として無罪か刑の減軽を求め、検察側は論告で「妄想の影響は限定的。犯行は計画的で残虐非道」として死刑を求刑していた。公判で青葉被告は動機を「小説のアイデアを盗まれたから」と繰り返し主張、反省の態度もほとんど見せず遺族の心情を逆なでし続けた。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

「闇の人物への対抗、反撃」として
弁護側は心神喪失か耗弱だったと主張

 起訴状によると、2019年7月18日午前10時半ごろ、京アニ社員70人がいた京都市伏見区の第1スタジオに侵入し、1階にガソリンをまいてライターで放火。36人を殺害し、32人を負傷させたとしている。

 京都地検は被告に精神疾患での通院歴があったことなどから、20年6月9日から12月11日まで鑑定留置を実施。事件前にガソリンを購入するなど計画性がうかがえる行動をしていたことなどを踏まえ、刑事責任能力を問える精神状態だったと判断していた。

 初公判が開かれたのは昨年9月5日。刑務官に付き添われ、車いすで入廷した。髪を刈り込みマスク姿で、顔にはやけどの痕。増田啓祐裁判長に名前を尋ねられると「青葉真司です」と小さな声で答えた。

 罪状認否では「間違いありません。こうするしかないと思った」と起訴内容を全面的に認めた。「こんなにたくさんの人が亡くなると思わなかった。やり過ぎた」と述べたが、謝罪や反省は口にしなかった。弁護側も事実関係は争わない一方、被告は妄想を抱いており「事件は(被告の)人生をもてあそぶ闇の人物への対抗、反撃だった」と弁明し、心神喪失か耗弱だったと主張した。

 検察側は冒頭陳述で「公安に監視されている」などの妄想はあったが、支配されてはいなかったと強調。動機については小説コンクールに応募したが「渾身(こんしん)の力作を落選させられた」「アイデアを盗用されすべて失った」と筋違いの恨みを募らせたと指摘した。

 生存者の供述調書から「死ね」という怒鳴り声が響いた後、スタジオに炎と黒煙が充満。犠牲者は逃げ場を求めて叫び続けたが、その悲鳴がだんだんと小さくなったことが明らかになった。