一般市民を装い社会に潜伏する
「非公然活動家」の日常とは
ところで、極左暴力集団などの反社会的集団の構成員でありながら、集会やデモなどに参加せず、一般市民を装ってテロやゲリラの計画・実行や盗聴などを行う「非公然活動家」の日常生活はどのようなものなのだろうか。
その多くは、今回の桐島聡と思われる人物の逃亡生活に通じる部分もある。
その基本は“目立たず溶け込む”だ。
1988年の警察白書に記載されている非公然活動家のアジト摘発事例によれば、その生活ぶりは下記の通りだ。
・近所には礼儀正しく笑顔であいさつを交わす
・サラリーマンらしく見せるため、毎日定時に出勤し帰宅する
・外出しない場合でも、隣家に不審がられないように必ずドアの開閉をして、外出したように見せかける
・単身や夫婦だけの生活を装いながら、他の活動家がひそかに同居し、外出は一切せずに部屋の中で音を殺して爆弾等の製造を行っていた
今回の報道でも、桐島聡容疑者とみられる男を知る女性は、男と日常的にあいさつを交わし、好印象を抱いていたという。
先述の腹腹時計にも、「普通の生活人であることに徹する」ことや「近隣との挨拶は不可欠」であることなどが書かれている。
非公然活動家の多くは、アルバイトや日雇いの仕事に就き、身分確認を厳しく求められないような簡単に働ける業種を選ぶ傾向にある。実際、東アジア反日武装戦線の一員で、桐島聡と同じ“さそり”グループのメンバーである黒川芳正受刑者やグループ内の他メンバーも日雇い労働に従事していた。
非公然活動家たちの勤務ぶりは基本的に真面目で、極力目立たないようにし、職場での人付き合いには決して深入りをしない。
今回の桐島聡容疑者とみられる男についても、同僚に“うっちゃん”と呼ばれ、談笑する姿も確認されるなど、周囲と良好な人間関係を構築する一方で、出自が分からないともいわれていることから、自身の情報には深入りさせず“普通の生活人”を装っていたようだ。