現代の経済を支えるあるルールはあまりにも古いため、それができる前の時代を覚えている人はほとんどいないだろう。どの国の船舶も公海を航行できるというルールのことだ。国際秩序の柱であるこのルールが突如として崩壊する兆候を示している。紅海ではイエメンの親イラン武装組織フーシ派が貨物船を襲撃しており、その影響で海上運賃が4倍に高騰し、世界の最も重要な輸送路の一つを米国船が航行することが歓迎されないという前例ができた。黒海は、ロシアのウクライナ侵攻によって多数の軍艦や機雷の間を通り抜けなければならない場所となり、ロシア、ウクライナ両国の危うい同意の下で穀物を積載した船が航行している。「アフリカの角(大陸北東部)」やマラッカ海峡の近海では、いったんは鎮圧されたように見えた海賊が盛り返し、海上交通を妨害している。南シナ海では中国が長年公海となっている海域の領有権を主張している。また、台湾を併合しようとする中国の動きにより、台湾海峡を通る輸送の先行きが危ぶまれている。