部長以上のエグゼクティブが良い組織をつくるために、チームでビジョンを共有する意義とは? そして、具体的な方法は? 本記事では、多くの企業幹部候補生を指導してきたグロービス経営大学院が、部長職以上を目指す人が理解しておくべき知識やマインドセットをまとめた新刊書籍『グロービスMBA エグゼクティブ・マネジメント入門』より一部をご紹介する。

グロービスPhoto: iStock/pain au chocolat(写真はイメージです)

組織開発とは「良い組織=いきいきと働ける職場を計画的につくり上げる取り組み」である。そして重要なのは、その「良い組織」が組織の理念やビジョン、戦略と整合していることだ。いくら士気や生産性が高くても、戦略と異なる方向へ進んでしまうのでは本末転倒である。

では、その経営理念やビジョンを部下と共有することには、どのような意義があるのだろうか。
グロービスは以下4つの意義があると考えている。

第1に、メンバーの動機づけである。
特に若い世代は、単なる業務遂行に価値を見出しにくい傾向がある。だからこそ「なぜこの仕事をするのか」「会社はどこに向かっているのか」を語ることで、やりがいや内発的動機を高めることができる。

第2に、一体感の醸成である。
部長が繰り返しビジョンを語ることで、部下は「同じ方向に進む仲間」という意識を持ちやすくなる。これは部内のセクショナリズム解消や、課を超えた連携、さらには事業部間の協力を促す。

第3に、意思決定の軸を提供するという点である。
部長の基本はエンパワメントであり、判断を部下に委ねる機会が増える。そこで経営理念やビジョンが判断の基準として機能することが重要になる。ジョンソン・エンド・ジョンソンが「我が信条(クレド)」を徹底させている例は有名であり、社員は迷った時にクレドに立ち返る。また、クレドの浸透度が管理職の評価にも組み込まれている。

第4に、エンゲージメントの強化である。
社員が自分の仕事に誇りを持ち、仲間とともに挑戦できると感じることは、離職率の低下にも直結する。経営に近い立場にある部長が、前向きに経営理念やビジョンを語ることは非常に大きな意味を持つ。

具体的な方法は?

では、どうしたら経営理念やビジョンを効果的に伝えられるのか。
代表的なアプローチは次の4つである。

・日常の業務に結びつけて語る:
新しい取り組みを説明する際に「これは会社の経営理念の◯◯を体現しており、戦略遂行に直結する」と伝える。特に重要なプロジェクトでは意識的に行うと効果的である。

・1on1での対話:
課長やキーパーソンとの対話の場で、「あなたの目標は会社のビジョンとどうつながっているのか」と問いかける。部下を通じて理念を広げるレバレッジが働く。

・MBOや評価の場で強調する:
単に数値目標の達成を評価するのではなく、理念やビジョンの体現度を重視する。MBOの目標そのものに理念やビジョンと結びつく項目を入れると効果的である。

・みずからが体現者となる:
どれだけ語っても、みずから率先して示さなければ意味がない。言葉と行動を一致させ、理念やビジョンに沿った行動を日々見せることが求められる。