KKD+データで
スピードと精度を両立させる

 一方で、KKDには一切頼らないと決めると、それはそれで、別の問題に直面することになります。それは「判断に時間がかかって、間に合わない」ということです。

 ありとあらゆる情報を手に入れて、それを基に考える。理論立てて、順序よく物事を整理しながら、どういう判断を下すべきなのか吟味する。そういうステップを踏めば、判断の精度を高めていくことができます。

 しかし、コンビニの仕事で明日のおにぎりやお弁当の発注量を決めるとか、飲食店の仕事で来月のアルバイトのシフト人数を決めるというような、日常的に発生する判断に、その都度、何時間もかけることはできません。

 判断の精度は確かに重要なものですが、判断のスピードも同様に重要です。

 では、どうすれば良いのでしょうか。

データを用いて
勘と経験を補強する

 その答えが、「データを用いて、勘と経験を補強する」ことです。

 勘と経験の速度を維持しつつ、データを用いることで判断の精度が落ちないように担保するのです。

 たとえば、「雨が降ったらお客様が減る」という知識があるとします。その知識の正しさは、過去の雨の日の来店客数と、それ以外の日の来店客数を比較することで検証できます。一般的に、お客様の数は天気だけでなく、曜日や祝日等の影響を受けます。また、「2月は少ない」とか「12月は多い」など、季節変動も大きな要因の1つでしょう。

 そうした中で「雨が本当にお客様の数に影響しているのか」「影響しているとしても、どのくらい強く影響しているのか」などをデータから導き出すことが可能です。

 データによる確認の結果、「雨かどうか」ではなく、「雨が一定以上の強さかどうか」で考えたほうが客数予測に適している、という結論に至るかもしれません。

 そのようなことを、データを見ながら考えることができれば、あなたの勘は最新のものにアップデートされます。この勘は、少なくとも数カ月や数年程度は有効でしょうから、その間は勘に基づいた迅速な判断を、精度高く行うことができるでしょう。

 もちろん、ある程度の時間が経った後には、改めてデータを見て、自らの勘の正しさを確認していく姿勢が求められます。