「勘をデータに基づく理論」として
形式化する

仮説とデータをつなぐ思考法田中耕比古著『仮説とデータをつなぐ思考法 DATA INFORMED』(SBクリエイティブ)

 こうすることで、勘は単なる経験則を脱し、データに基づく理論として再構築されます。この理論は「周囲に共有可能な形式知」として扱うことが可能です。

 一般的に、勘や経験が嫌われるのは、それが暗黙知として、ある人の脳内にだけ存在するからです。誰かの脳内にある判断基準は、いくらそれが優れたものであっても、組織全体への貢献は、極めて限定的なものにとどまります。

 しかし、データを用いることで、一度「形式知」として明文化されれば、これは、多くの人が利用可能な技術になります。若手を指導したり、新たに異動してきた人に伝えたり、そういう目的に活用することができます。

 形式知が拡散され、再利用されていくと、それぞれの現場で、別のデータを用いて形式知が再検証されていくことにつながります。そうすると、「雨の影響」が店舗ごとに異なることがわかるでしょう。また、雨の日に売れる商品の違いなどについても、理解が進んでいくことになります。そして、そうした他店での知見は、巡り巡って自分の店舗の改善のために活用できるはずです。この好循環を作ることができれば、「組織として、判断の質とスピードを両立させている」と胸を張って宣言することができます。

Point
・データによる判断は、精度は高いが時間がかかる。
 一方、勘による判断は迅速だが、環境変化につれて精度が落ちる。
・勘の精度は、データに基づく一定期間ごとのアップデートで維持できる。