高級すし店は、なぜ3文字の店名が多いのか
「すし」はもともと、魚介類を塩に漬け込み自然発酵した食品を指していた。それが食べると酸味を感じることから、酸(す)っぱいが酸(す)しとなったという。大坂(当時)では「鮓」、江戸では「鮨」の字が使われることが多かった。特に「鮨」は「魚が旨い(うまい)」に通じる。
「寿司」は当て字で、寿(ことぶき)に司(つかさど)るを掛けた意味になり縁起がいい。また、「寿詞」(じゅし)に通じ、長寿(賀寿)を祝う言葉に通じるとする説もある。
現在では、高級店は魚しか扱わない“鮨”を、一般大衆店では稲荷(いなり)すしなども扱い総合的な“寿司”を使う傾向がある。電話帳WEBの検索では、全国に鮨の字を使う店は約7100店、寿司の字を使う店は約2万2000店あるようだ。
また、高級店の店名は、平仮名と漢字で3文字に収めることが多い。その理由は、暖簾(のれん)にある。今回話題になった店も、店主の名字は漢字で2文字だが、店名は平仮名と漢字で3文字にしていた(ただし、暖簾はない店だ)。
昔、日本で布のサイズを表す言葉の一つに「小幅」(こはば)があった。手ぬぐいの幅が小幅だ。小幅は約36cm、店の入り口は半間(約91cm)が多く、この布を横に3枚並べると約108cmで少しだけ入り口より大きなサイズになり、店先に掛けるのにちょうど良かった。
そこから昔の暖簾は“小幅で3枚”が基本の形となった。暖簾は小さな布の上部分を縫い、下部分の割れているところをくぐれるようにしている。その割れている布の数を巾数(きんすう)といい、奇数3枚で組み合わせる。その巾ごとに店名の字を割り当てると見栄えが良く、すし屋の名前は暖簾に合わせ3文字が多くなった。
2で割り切れない奇数は、「切れないご縁」の意味があり、縁起のいい数字とされてきた。割り切れずに余りが出ることから、余裕があることにもつながる。一般的に、刺し身の盛り合わせは3切れ、5切れで提供されることが多い。また、盛り付ける魚の種類も3点、5点盛りが基本。これも暖簾同様「奇数は縁起がいい」という考え方によるものだ。