高級すし店の見分け方とは?

 さて、いよいよ高級なすし店かどうかが分かる1つのチェックポイントの話に移る。事件があった店は、高級な鮮魚を仕入れ、いわゆる職人の“仕事”をしているお店で、手に入りづらい希少価値のある日本酒や、高級ワインも提供していた。筆者は、サ-ビス業の顧客満足度を上げる現場指導を行っている。単に魚や酒の原価が高いからという要素ではなく、サービスの観点から見て「高級すし店とは?」という話をしたい。

 まずはガリ。客のガリが減ってきたら、なくなる前にすぐに補充するのは、中級店の上クラスだ。案外と自分の板場しか見られておらず、切らしてしまう店が少なくない。

 そして、高級なすし店であるならば、客のお茶は絶対に切らさない。つまりは、お客から「お茶のお替わりください」と言われる高級店はあり得ない、ということだ。お茶がなくなっていることに気が付かず、客から催促されたら高級店では“負け”を意味する。

 すし屋がお茶を出すときに使う湯飲みは、分厚くて背が高い円筒形の物で、すし屋特有のデザインだ。これは江戸時代に、江戸前すし『華屋与兵衛』(はなやよへえ)が、脂がのった魚を食べた後の口直しとして、口の中の脂をいったん洗い流すための熱いお茶を提供したのがきっかけだった。熱いお茶がたっぷり入っていても手が熱さに耐え得るようにということで、あの大ぶりで分厚い湯飲みになった。

 あの湯飲みは、普通の湯飲みよりも中が見えにくい。湯飲みの中が見えないのに、どうして、まだ量がどのくらいあるのが分かるのか。それは、湯飲みの角度を、絶えず板前や仲居が見て確認しているからだ。つまりはそれだけ、客の動きを観察し、一挙手一投足を見ているということだ。湯飲みの中のお茶の量が少なくなると、湯飲みを傾ける角度がだんだん大きくなってくる。水平の角度に達する前に、茶を差し替えるのが一流店の流儀となる。