もののやりとりだけだと
それで終わってしまう

 ここはもともと「伊豆グリーンパーク」という熱帯植物園だった。植物園が閉園すると、2011年に2月に館長であるセーラちゃんがそのまま買い取って改装。同年3月には東日本大震災が発生し、開館が危ぶまれたが、同年7月に開館にこぎつけた。なぜこの場所を選んだのかを尋ねると、「『水滸伝』の梁山泊のようで、ワクワクして楽しいでしょ。山を背にした砦(とりで)のようで、山を登るように中を巡ることができるから」とセーラちゃんは言う。

観覧
マップ広大な敷地ですべてを観覧すると半日はゆうにかかりそうだ

 甲子園球場ほどもあるという広大な敷地内は、昭和レトロな雰囲気をまとった雑貨やおもちゃ、巨大なオブジェや人形、昔どこかで見たことのある日用品、時代を表す広告やポスターなどが、所狭しと並んでいる。

「大仏殿」へと進むと、まず目に入るのが巨大な聖徳太子像だ。上半身のみのため、鎮座するというよりも、地面から頭がぬっと突き出ているように見える。大きさは奈良の大仏の上半身とほぼ同じらしい。

 映画で使われたものを引き取って改造したとのことで、解体して運ぶのにトラック8台を要したという。「配送の途中、怪しい宗教団体が御神体を運んでいるのでは、と間違えられた」とセーラちゃんは笑う。頬の塗装がはがれかけているが、「思春期なので、にきびができているんです」と、あえて補修はしない。

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大仏巨大な聖徳太子像

 この大仏殿は、かつての植物園の温室を利用したもので、ゆるやかな螺旋(らせん)階段上に広がっている。そこで聖徳太子像の次に目立つのが、龍神や牛頭馬頭(こずめず/仏教において地獄にいるとされる獄卒)、ジンベイザメといった大きなオブジェだ。

 実は、東京藝術大学の学生が学園祭「藝祭」で毎年つくる神輿で、「藝祭終了後、引き取り手がなかったものを、SNSを介してこの博覧会の存在を知り、連絡をくれました」とのこと。学生16人くらいに組み立て直してもらった。「もののやりとりだけだとそれで終わってしまうが、来てもらうと、そこから新たな人とのつながりが生まれる」と話す。

じんべえ
オブジェ
観覧中2

 大仏殿には、人形やマネキン、雑貨の並んだショーケースも多数あるが、入り口で見たのと同様、その並び自体には脈絡はない。展示品は、骨董品(こっとうひん)店やインターネットオークションで購入してくるほか、各地で閉園したミュージアムや秘宝館、テーマパークなどの展示物を引き取ったりしている。「全体の中での割合は高いわけではありませんが、一般の人から寄贈されることも増えています」とセーラちゃんは、ひな人形を指し示す。

キャラセーラちゃんの奥にいるキャラクターも出迎えてくれたが、スタッフではなく来館者だという。来館者とスタッフの垣根もごちゃまぜだ

 続いて足を踏み入れた空間には、「昭和を通り抜け」と入口に書かれている。昭和の時代を約10年ごとに区切り、昭和の日用品や広告などが集められ、マネキンを使って再現された部屋も見ることができる。