株のイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

相場は常に上昇・下降を繰り返し、先を読むのはプロでも困難だ。しかも、人間の心理として値上がり時に買い、値下がり時に売ってしまうもの。そこで威力を発揮するのが「積み立て投資」。低リスクで50代からの資産形成を目指す初心者に、そのメリットを投資のプロが解説する。※本稿は、朝倉智也『投資のプロが明かす 私が50歳なら、こう増やす!』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。

価格変動時の投資家の心理を
シミュレーションしてみる

 まず、図1をご覧ください。これは価格変動の2つのパターンを図示したもので、「100円でスタートした価格が120円まで上がった後、100円まで下がり、次に115円まで上がり、その後も上がったり下がったりを繰り返して、3年後に150円になった」というケース(1)と、「100円でスタートした価格が70円まで急落し、その後なかなか価格が戻らなかったものの、じりじり上昇して3年後に130円になった」というケース(2)です。

図1_投資するタイミングは難しい図1 投資するタイミングは難しい。同書より 拡大画像表示

 ケース(1)の場合、100円から順調に120円まで価格が上昇したとき、みなさんはパッと売却して利益を確定できるでしょうか?「せっかく値上がりしているのだから、もう少し様子を見たい」という人が多いのではないでしょうか。

 そこから価格が下がった後、少し上がって115円になったら、どうでしょうか。一度は120円まで値上がりしたのを見てしまっていますから、「120円まで戻らないと売りたくない」と考え、やはり利益を確定するのは難しいのではないかと思います。

 ところがまた価格が下がり、103円くらいになると、「これ以上値下がりして元本割れしたらどうしよう」などと不安になり、売却してしまったりするのです。

 ケース(2)のように、最初に100円で買ったものが70円まで値下がりしたとしたら、どうでしょうか?

 多くの人は「二度と投資なんてやりたくない」と思うのではないかと思います。そして「少なくとも100円に戻るまでは売らない」と決め、我慢するというのがよくあるパターンです。

 そして実際に100円に戻ると、おそらく9割の人は「やれやれ、やっと価格が戻った」と、ホッとして売却するのです。このようなやり方をしていると、いつまで経っても資産は増えません。

安いときにまとめて買うのは
現実的でない

 当たり前のことですが、投資で利益を出すためには、「安く買って高く売る」ことが必要です。そこで多くの人は、値動きに一喜一憂しながらタイミングをはかり、「安いときに買って、高いときに売ろう」と考えるのですが、これが大きな間違いなのです。

 タイミングを見て売買をするというのは、実は大変に難しいことなのです。

 図2は、TOPIXと国内の投信の資金流出入額の推移を示したグラフです。このグラフを見ると、TOPIXが上昇しているときほど投信への資金の流入が多く(四角の枠)、逆に、TOPIXが下落しているときには、投信から資金が流出している(点線の丸枠)ことがわかります。

図2_TOPIXと国内公募投信の資金流出入金額図2 TOPIXと国内公募投信の資金流出入金額。同書より 拡大画像表示