フクヤマ:中国の改革の当初から、「それが自由民主主義に対する一番もっともらしく見える代替案だ」と私は主張しました。権威主義的な政治システムに、準市場経済が混じり合っています。それに、これほど短期間で成長した国は他にありません。その規模を考えると、信じられないくらいです。それが歴史的な達成であることは、間違いありません。

 一方で、これが持続可能なモデルなのか、はっきりとしていません。今後10年から20年間、中国を脅威とみなし続けることになるのかについても、明確ではありません。なぜなら、政治モデルと経済モデルに大きな問題があると思うからです。

 実際に中国の成長率は、大きく鈍化しています。そしてその鈍化は、独裁的な意思決定システムの失敗と、直接関係があるように思えます。習近平氏は、鄧小平氏が始めた「自由経済改革」を支持しているとは思えませんし、その結果、中国経済は不調に陥っています。

 経済以外の文化的、政治的な要素で、人々が真に称賛する中国のシステムがあるとは思えませんし、中国の文化は、自国以外に広がってはいません。「中国に住みたくてたまらない」と思う人は多くないでしょう。

 経済的に大きく成長したとはいえ、社会的システムの面では優れているかどうかわかりません。今後数年、中国の動向を注視する必要があります。過去30年に比べると、今後10年はそれほど良い状態にはならないでしょう。