フランシス・フクヤマ:あなたのおっしゃることは、多くの点で正しいと思います。2023年の世界において、「自由民主主義が、いかなる場所においても成功をおさめ得る唯一の代替手段だ」と言う人はいないでしょう。長い目で見れば、その主張は正しいかもしれません。しかし過去15年間、グローバル民主主義は後退しています。

 権威主義的な二つの大きな勢力、ロシアと中国が自らの国家像を打ち出そうと試みています。両国とも「自由民主主義は時代遅れ」とか「死につつあるイデオロギーだ」と公言しています。現在の世界が大きな課題を抱えているのは、間違いありません。1989年や1992年よりも、楽観的にはなれない状況です。

――先ほど中国の話題が出ましたが、『歴史の終わり』を発表して以来、中国は自由民主主義になることはなく、非自由主義的で非民主的な体制が続いています。世界中の多くの人が、「民主主義や自由という価値が、中国の挑戦に対して耐え得るのかどうかが不透明だ」と感じています。中国は冷戦後システムの最大の受益者であり、最も成功した独裁国家と言えるでしょう。昨今の中国の挑戦に対して、あなたはどうお考えですか。