日本代表・森保監督の続投「鶴の一声で即決」の違和感…“電撃解任”韓国との対比で考えるNurPhoto / Gettyimages

ともに優勝を目指して臨んだ2024年のアジア杯・カタール大会で、日本代表と韓国代表はいずれも道半ばで姿を消した。準決勝敗退を喫した韓国では、2026年夏まで契約を結んでいたドイツ出身のユルゲン・クリンスマン監督が電撃解任された。一方、韓国よりも早い準々決勝でイラン代表に逆転負けを喫した日本の森保一監督は、その手腕を問題視されないまま続投している。大会後に対照的な動きを見せる両国の違いを追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

韓国代表で内紛発生も
監督は仲裁せず!?

 サッカー韓国代表のユルゲン・クリンスマン監督が2月16日に電撃解任された。先のアジア杯・カタール大会では、64年ぶり3度目の優勝を期待されながら準決勝で敗退。それに加え、イギリスメディアのスクープを介して発覚した前代未聞のスキャンダルが追い打ちをかけた。

 イギリスの大衆紙「ザ・サン」が2月13日に、韓国の両エース、FWソン・フンミン(トッテナム・ホットスパー)とMFイ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)が、6日のヨルダン代表との準決勝前夜に衝突。小競り合いの末に、ソン・フンミンが右手中指を脱臼したと大々的に報じた。

 まさかの内紛が起こったのは5日の夕食の席だった。イ・ガンインら若手数人が早く食べ終え、席を離れて卓球に興じ始めた直後に、キャプテンのソン・フンミンが注意を与えたのが発端だった。同メディアは「これにイ・ガンインが反発した」と次のように報じていた。

「ヨルダン戦へ向けてチーム内の絆を深めるために、全員で夕食を取りたいと考えていたソン・フンミンは席に戻るように促した。しかし、イ・ガンインは耳を貸さず、その態度に苦言を呈した別の選手に対して暴言を吐いた。激怒したソン・フンミンがイ・ガンインの喉元をつかみ、イ・ガンインもパンチで応戦した。パンチは空振りに終わったが、大勢の選手が入れ乱れる大騒動となったなかで2人が引き離された。その際に、ソン・フンミンが右手中指を脱臼した」

 これを受けて韓国メディアもこぞって内紛の余波を取り上げた。夕食の席に居合わせたクリンスマン監督は一連の騒動を静観していたばかりか、その後に選手たちとの関係を一気に冷え込ませる態度を取ったと、韓国メディアの「イーデイリー」が報じている。

「ベテラン勢がクリンスマン監督に対して、ヨルダン戦でイ・ガンインを出場させないでほしいと直訴した。しかし、イ・ガンインを高く評価する指揮官はこれを無視した。昨年から代表チーム内にいくつかの派閥があるという噂が絶えなかった。チーム事情に詳しいKFA(大韓サッカー協会)関係者は、こうした問題が『卓球事件』を介して顕在化したと指摘している」

 ヨルダン戦で先発したソン・フンミンは、中指をテーピングで固定しながらフル出場。イ・ガンインも先発フル出場したが、チームとして枠内シュートを1本も放てないまま0-2で完敗した。