W杯での躍進で
覆い隠されていた弱点

 だがイラン戦の後も、森保監督はチームを作り上げている途上だと強調するだけだった。就任間もない状況ならまだしも、第一次政権から6年目を迎えているチームの指揮官の言葉には聞こえなかった。

「チーム活動のなかで、すべての局面に対応できるように少しずつコンセプトを積み上げている。イラン戦においては、選手がうまく局面を打開できるだけのコンセプトがまだ共有されていなかった、という部分があったが、この経験がひとつの積み上げになると思っている。今後はチーム戦術で解消できる部分と、選手が対応力を持って局面を打開できる部分を両輪としていきたい」

 森保ジャパンでは「いい守備から、いい攻撃へ」がコンセプトとして掲げられている。しかし、何をもって「いい守備」であり「いい攻撃」なのかは、大半がプレーする選手の質に委ねられている。そして「いい守備」が寸断されたイラン戦では、最後まで修正が施されなかった。

 確かに2022年のカタールW杯では、優勝経験国のドイツ、スペイン両代表をともに逆転で撃破。世界を驚かせた。その快進撃に続いて、W杯後には歴代最長の国際Aマッチ10連勝を記録した。その眩い輝きに覆い隠されていた問題点が、アジア杯敗退を境に再びあぶり出された。

 そして、敗退後の対応は韓国と日本とで大きく違った。韓国のKFAは前出の戦力強化委員会でクリンスマン監督の解任は不可避との答申をまとめ、翌16日の緊急役員会で可決された。KFAのチョン・モンギュ会長による解任理由を、韓国メディアは一斉に伝えている。

「韓国代表チームの競争力を引き出す指導力や選手マネジメントなどの面で、代表監督に求められる能力とリーダーシップを発揮していないと判断した」

 26年夏の次回W杯終了まで契約を結んでいたクリンスマン監督及びコーチ陣に対しては、日本円で11億円を超える違約金の支払いが発生する可能性がある。時間的な問題から、タイ代表との連戦が待つ3月のW杯アジア2次予選には暫定監督で臨む状況も覚悟しているという。

 それでも代表チームの公認サポーター団体、レッドデビルズが同監督の解任を求める公式声明を発表するなど、堪忍袋の緒が切れた感のある国内世論やメディアに、KFAも抗いきれなくなった。

 一方の日本サッカー協会(JFA)は、イランに敗れた直後に田嶋幸三会長が森保監督の続投を明言している。KFAの戦力強化委員会にあたる技術委員会も開催されたが、田嶋会長の続投支持を受けた議論であり、アジア杯での問題点も今後への課題として確認されただけだった。