選手任せのマネジメントに
一部選手が悲鳴

 森保ジャパンは優勝候補筆頭としてアジア杯に臨みながら、不安定な戦いを繰り返した。

 具体的には、体格差を生かした戦法に対応できず、グループステージでイラク代表に敗戦。ベトナムとインドネシアに勝利したことで決勝トーナメント進出を果たし、その1回戦ではバーレーンに勝利したが、準々決勝でイラン代表に敗戦。韓国よりも早くカタールの地を去った。

日本代表・森保監督の続投「鶴の一声で即決」の違和感…“電撃解任”韓国との対比で考えるカタールから帰国した2月4日夜に、羽田空港でメディアの取材に応じる森保監督(撮影:藤江直人)

 逆転負けを喫したイラン戦は特に後半で、森保監督の悪癖が顔をのぞかせ続けたと言っていい。

 イラン戦の前半は日本の1点リードで終了。1点を追うイランは後半から前線の選手の数を増やし、ロングボールを蹴り込んだ上でこぼれ球を拾う戦法に変えてきた。隣国・イラクと同じ戦い方に切り替えたといえる。その結果、イランは後半10分に同点とした。

 それ以降もイランに主導権を握られる展開が続いたが、森保監督は動かなかった。前半にイエローカードをもらった影響か、センターバックの板倉滉(ボルシアMG)はプレーに精彩を欠いていたが、森保監督は交代させなかった。ロングボールに対抗するためのフォーメーション変更などの手も打たなかった。

 試合終了間際に奪われた勝ち越し点は、板倉と守備の要・冨安健洋(アーセナル)が日本のゴール前でボールを見合うまさかのミスから、板倉が与えたPKを決められたものだった。

 逆転された直後に浅野拓磨(ボーフム)、細谷真大(柏レイソル)の両FWを慌てて投入するも、プレー時間を得られないまま試合は終わった。試合後に「私が交代カードをうまく切れなかったのが敗因」と采配ミスを認めた森保監督は、帰国後にその真意を語っている。

「延長戦に入るかもしれない状況で、相手も延長戦でパワーを上げる戦い方をしてくると思っていたので、後出しじゃんけんで勝とうと考えていた。相手も非常にパワーを持って戦っていたし、われわれも耐えながら戦っていたのもあって、そのあたりの見極めが自分のなかでうまくいかなかった」

 先制ゴールを決めたMF守田英正(スポルティング)が、試合後に「もっと指示してほしかった」とベンチワークの欠如に言及して大きな注目を集めた。批判と受け止められるのを覚悟の上で、戦術が実質的にピッチ上の選手任せになっている状況に守田が悲鳴をあげた形だ。