単行本累計1900万部突破を突破した、人気サッカー漫画の『アオアシ』。早稲田大学ビジネススクール教授であり経営学者の入山章栄氏は「この漫画には、現代ビジネスに必要なチームの極意がある」と力説する。一体どういうことなのか。ダイヤモンド・オンラインが配信している「学びの動画」の特集『入山章栄の世界標準の経営理論』(全30回)では、入山氏が視聴者に薦めたい「名著(漫画含む)」を厳選。経営学と絡めながら解説している。今回は、その骨子を書き起こした記事を特別公開する(元の動画はこちら)。
スポーツ漫画の中で『アオアシ』が
ビジネスの参考になる理由
『アオアシ』(作:小林有吾)は、2015年1月から週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて連載中のサッカー漫画だ。『キャプテン翼』をはじめ、日本には数多くのサッカー漫画があるが、今『アオアシ』がビジネスパーソンに人気だという。なぜなのだろうか。
その理由の一つがテーマ設定だ。これまでのサッカー漫画は、学校の部活動やプロの世界を描いた作品が多かった。しかし、『アオアシ』の舞台となるのは「Jユース(Jリーグの下部組織)」なのだ。
皆さんがご存じの通り、日本にはプロサッカー選手がプレーする「Jリーグ」があり、全国各地にプロのクラブチームが存在している。
そして各クラブは、ユースと呼ばれるプロを育成するための下部組織を設けている。そこで育成した選手をトップチームやプロに昇格させるシステムもある。プロに上がれる選手もいれば夢破れる選手もおり、なかなかに厳しい世界である。実はそのユースを本格的に描いた作品は極めて珍しいのだ。
また、一般的なサッカー漫画は、ガンガン攻撃をしてシュートを決める花形ポジションのFW(フォワード)や、攻守両方で重要な役割を担っているMF(ミッドフィルダー)を描くケースが多い。
しかし、同作品の主人公である愛媛県出身の青井葦人(あおいあしと:以下、アシト)はもともとFWだったものの、そこからDF(ディフェンダー)に転向する。具体的なポジションは、日本代表で活躍した長友佑都選手と同じ「左サイドバック」である。
配置転換後、アシトは選手として驚異的な成長を遂げていく。これまであまり描かれてこなかった「DF」にスポットライトを当てつつ、未知の舞台である「ユース」と掛け合わせた目新しさが、読者に支持されているのだ。
そんな多くの人の心をつかんで離さない『アオアシ』だが、「物語を読み解くと、ビジネスに役立つ示唆があります」と早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は太鼓判を押す。では一体、どんな点がビジネスに通じているのだろうか。