そして、診察後は「バイバイ」と笑いながら、胸をはって病院を後にします。どこか誇らしげで、こういう子は、次もちゃんと受診してくれるようになります。
反対に、泣いて帰った子は、次回も怖くて、病院が嫌いになってしまいます。力で押さえつけようとすれば、反発するのは当然です。
「子どもだからできない」と頭ごなしに決めつければ、成長もしません。まずは、こちらから話しかけ、相手の心に橋をかける。そのうえで相手を認め、やらせてみる。これは大人も子どもも関係なく、人間関係の基本だと思うのです。
自分のペースを押しつけない
うつ病の人との接し方
“心に橋をかける”ことは、口で言うほど簡単ではありません。誰もが、その人だけの世界をもっているからです。触れられたくない痛みや悲しみがあるかもしれません。
話すよりも聴くほうが難しい、というのはこのためです。聴くことは、相手の世界に入ることでもあるからです。ずけずけ聴くことは、人の心の中に、土足で入っていくことになります。
たとえば、うつ病の人の場合は、「それ、どうしたの?」とか「なにがあったの?」「なんで?」などと聞いてはいけません。
また、「がんばろう」とか「大丈夫だよ」とムリに励ますこともNGです。人にはそれぞれ“テンポ”がありますから、それに合わせて見守ることが大事なのです。
「がんばろう」とか「大丈夫だよ」というのは、こちらのペースです。
「どうしたの?」とか「なんで?」というのも、相手に合わせているようで、実は自分が知りたいという、こちらペースの質問なのです。
だったら、何も話せないのでは? と思うでしょうが、そんなことはありません。心のこと以外なら、聞いても大丈夫です。
たとえば「体調どう?」や「具合は?」など、体のことを聞く。あるいは「ご飯食べたら?」と促すのもいい。挨拶も普通にしていいと思います。
心を傾けていない
外来診療室の医師
でも「治療に行かなきゃダメだよ」とか「ご飯食べないとダメだよ」などと、質問側の意見を加えるのはよくありません。
背中を押しているつもりなのでしょうが、それは相手の心に手を突っ込み、かき回しているような行為と言えます。