選択肢は大きく分けて5つ

 誰も住まなくなった実家をどうするか。選択肢は大きく分けて5つあります。

 第一は、空き家のまま現状維持で判断を「先送り」することです。そもそも相続による共有者の意見がそろわなかったり、家の片付けを始めようと思ってもそこでつまずいてしまったりするとどうしてもそうなってしまいます。

 第二は、早めに「売却」してしまうことです。売買専門の仲介会社に依頼したり、自治体が運営する「空き家バンク」に登録したり、最近は空き家を専門とする民間のマッチングサイトも複数あります。

 第三は、他人に「貸す」ことです。これも賃貸専門の仲介会社に依頼したり、自治体が運営する「空き家バンク」に登録したり、民間のマッチングサイトを利用したり方法はいろいろあります。

 第四は、賃貸の派生型として民泊やゲストハウスとして利用することです。都市部はもちろん地方においても観光地などでは可能性があります。最近は日本の田舎を好むインバウンド需要が盛り上がっています。

 第五に、自分で住んだり、別荘として利用するという手もあります。

お勧めなのは「家の中を片付けて貸す」こと

 これらの選択肢のうち、実際に多いのは第一の「先送り」でしょう。とはいえ、これまで説明してきたようにいろいろリスクがありますし、いずれどこかのタイミングで決断が必要になることは間違いありません。

 次に考えるのが第二の「売却」です。マスコミでもこの方向が盛んに勧められています。所有者にとって空き家を手放してしまうことで様々な面倒から解放されるというのは確かに魅力的です。

 ただし、立地にもよりますが、昭和の木造戸建てなので売却価格がどれくらいになるか不透明ですし、場合によっては買い手がすぐには見つからないこともありえます。

 中には第三の「賃貸」を考える人もいるでしょう。借り手はいるのか、家賃設定はどうするのか、リフォームは必要なのかなど気になる点もあるかと思います。

 ただし、「賃貸」において陥りやすいのがリフォームを前提条件とすることです。下手をすると、リフォーム費用の見積もりをとって金額の高さに驚いて「先送り」や「売却」に傾くこともあります。

 そうではなく、家の中を片付けてクリーニングし、そのまま貸すことを私はお勧めしています。

 なお、第四と第五の選択肢はレアケースでしょう。特に民泊やゲストハウスは予約受付や清掃などのオペレーションがともない、かなり専門性が求められます。地元の自治体や地域社会との調整も必要で、簡単に始めるというわけにはいきません。自分で住んだり別荘として利用するというのも、可能であればすでにそうしているでしょうし、考えているだけであれば「先送り」と変わりません。

なぜ「空いた実家」を売ることより、貸すことをお勧めするのか?イラスト/春仲萌絵

(本原稿は、吉原泰典著『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』を抜粋、編集したものです)