あくまで“ものさし”ですので、すべてを達成しなくて構いません。家事は、高いレベルをめざせば天井知らずです。楽しければそれもよいですが、他のことがなおざりになったら仕事や学業、健康などで問題が生じます。また、がんばりすぎてイヤになりやめてしまったら、やがては心身のバランスを崩します。ほどほどを見極めることが大切です。

 一方で、身につけた家事の技術は一生ものです。若いうちに少しがんばって習慣づければ、やがては体が自然に動きラクになっていき、そして家事をしている自分に自信がつきます。

 そもそも、家事の概念は幅広く、料理には、いわゆる調理だけではなく食中毒を起こさないように食材を衛生的に管理することも含まれます。洗濯せずに衣類を着続けることが、ウイルスや雑菌を媒介し感染症やアレルギーにつながるということに、異論をさしはさむ人はいないでしょう。災害に備えて在宅避難の準備をすることだって、「家事」の一部です。

 ですから、当初、私が抱いた疑問「家事をしない部屋で暮らせば、人は死ぬのかどうか」の答えは「イエス」。これからはもっと声を大にして、家事は大切だと訴えていこうと思います。

(作家・生活史研究家 阿古真理/生活・文化編集部)

AERA dot.より転載