初診料アップで医療従事者は賃上げ
患者側は自己負担が増える
また、最新情報を目下、収集すべきなのが医療と介護の報酬改定。24年度は、6年に1度だけ訪れる医療と介護が同時に報酬改定される年だ。
世の中で物価や賃金が上がり、業界においては人手不足が深刻化する中で、今回の改定は医療報酬(医療サービス部分)も介護報酬も賃上げに充てるかたちで引き上げられた。医療機関や介護事業所の収入は国の定める報酬で固定されており、他の産業のように価格に転嫁できない。今回の改定でプラスするのは道理であった。
この改定を個別に見ると事業者への影響はプラスもあれば、マイナスもある。また、患者・利用者への影響は事業者と異なってくる。
外来受診における初診料と再診料、および入院基本料が引き上げられるのは、医療機関側にとっては基本的にプラス。医師など医療従事者の賃上げにつながるが、患者側は自己負担が増える。物価などを反映して特養や介護老人保健施設(老健)の居住費が引き上げられ、これも利用者側の負担アップとなる(下表参照)。
訪問介護の基本報酬は軒並みマイナス改定になり、事業者は怒りをあらわにしている。利用者にとって介護保険サービス費の負担は減るものの、実はサービスが受けにくくなるという大きな副作用が懸念される。そうなると利用者にとってもマイナスの影響の方が大きくなる。
病院の敷地内にある「敷地内薬局」の調剤料金が大幅に引き下げられるのは、敷地内薬局にとっては大打撃。患者にとっては単純に、調剤料がお得になる。
医療においてはこのほかに、認知症の新世代治療薬が登場しており、それ自体は患者側にとってプラス。しかし、実際には希望したからといって治療にたどり着けるわけではない。治療を希望する患者が、処方する適応から外れていることが多いのだ。
期待していた患者の中には、処方対象にならずに絶望する者もいる。その一方で、新たな治療チャンスを得る者もいる。
医療や介護は、命や生活に大きくかかわってくる。後悔しない人生を送るためには、医療・介護のさまざまな変化について自分たちにどんな影響が出るのかまで、最新情報を深く知ることが重要だ。