後悔しない 医療・介護#10Photo:PIXTA

特別養護老人ホーム(特養)は入居を希望する待機者が多過ぎるし、「安かろう、悪かろう」。そう思い込んで、自分や家族の「終の棲家」として検討する際の選択肢に入れていないのだとしたら、もったいない。看取り実績で厳選した特養788施設リストを9回に分けて大公開する。特集『後悔しない医療・介護』の#10でお届けするのは東京の142施設リストだ。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

10年前より待機者数が激減
特養を選ぶ時代になった

 核家族化が進む現代、子供たちへ介護負担をかけたくない親世代、介護を尽くせない子世代の双方にとって悩ましいのが、終末期を迎える「終の棲家」探しだ。このとき特別養護老人ホーム(特養)に目を向けないという人が少なくない。入居の待機者が多くて順番が回ってこないという諦めだったり、所得が少ない入居者に利用料負担の減免措置があって彼らの利用を中心にした「安かろう、悪かろう」のイメージが強かったりするからだ。

 しかし、この10年で状況は大きく変わっている。

 特養は利用者数が約64万人と高齢者向け施設・住まいの中で最も多い。24時間の介護体制が敷かれ、終身にわたって利用できる。終の棲家の代表格である(下表参照)。

 この特養は、入居の順番が回ってこないことが最大のネックとなってきた。ところがこの10年近くで待機者は大幅に減った。2015年度に入居者の対象を原則として「要介護3以上」に絞ったことで、50万人以上いた待機者数が激減したのである。しかも、要介護3以上の待機者数だけを見ても減っている。14年度調査で34.5万人だったものが、22年度では25.3万人になった(下図参照)。

 要介護3以上の待機者数まで減った背景には、特養の施設数が増えたのに加えて、民間の有料老人ホームなど特養以外の施設も増えたことがある(下図参照)。

 過疎地域などでは、高齢者の人口が減り始めている。入居者が要介護3以上になったことで、平均入居期間が徐々に短縮されているのも影響しているだろう。直近の平均入居期間は約3年。待機状態であっても1年で入居者のおよそ3分の1は入れ替わるため、順番が回ってきやすくなった。

 安さよりも過ごしやすい居室環境を求めるのであれば、よりチャンスは回ってきやすい。近年は国による推奨の下、完全個室で居室前に共有のリビングスペースを備えたユニット型施設が増えている。ユニット型個室は従来型施設の相部屋より費用がかさむ。安さが第一という待機者はユニット型個室を避けるため、空きがあれば入りやすいのだ。

 特養の多くは看取りに対応している。病状の改善が見込まれない終末期に、無理な延命治療をしないで自然に最期を迎える終の棲家となり得る。もっとも、サービスの質は施設によって変わる。中には看取り時期が訪れると看護師や医師が連携して24時間対応する態勢を整えるところもある。

 空きがあればどこでも駆け込むのではなく、「安かろう、悪かろう」と切り捨てるのではなく、個々の特養の情報を収集して選ぶ時代になった。

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