禁煙進まず?「加熱式たばこ先進国」になった日本
「加熱式たばこ」の勢いが止まらない。
一般社団法人日本たばこ協会によると、加熱式たばこの販売数量(2023年4〜12月累計)は、前年比11.8%増の435億本だった。紙巻きたばこ販売実績を100として、加熱式たばこの販売数量を比較をすると、2年前は47.8だったものが64.1にまで増えている。今のペースなら紙巻きたばこを追い抜くのも時間の問題だろう。
そんな「加熱式たばこフィーバー」にメーカー側も驚いている。紙巻きたばこから将来的な撤退を表明して、加熱式たばこ「アイコス」に力を入れている、米フィリップモリスインターナショナル(PMI)のヤチェック・オルザックCEOも昨年10月の自社イベントでこう述べている。
「日本ではこの10年で、35%の20歳以上の喫煙者を煙のない製品に切り替えることができた。こんなにも急速に煙のない製品に切り替わった国は他になく、規制当局にとってもPMIにとっても大きな成功だ。今後はまだ切り替えていない喫煙者に切り替えを促進し、完全に煙のない社会をめざしたい」(産経新聞、24年2月29日)
では、なぜ日本は世界トップレベルの「加熱式たばこ先進国」になったのか。よく言われるのは、煙や臭いの問題が指摘されるようになり、紙巻きたばこが吸える場所が減ったことで切り替えたという説。もしくは、加熱式たばこも併用するという、いわゆる「デュアルユース」が進んだことだ。
ただ、たばこ企業も驚くほどの成功をおさめたのは、加熱式たばこが、喫煙者たちが抱える、次のような「悩み」の解決策になったことが大きい。
「最近、体の調子も悪いからたばこやめたいんだけど、これまで禁煙に成功したことないし、どうしたもんかねえ…」
つまり、「健康」を気にし始めたけれど、どうしてもやめられないというニコチン依存症ともいうべき人々の「受け皿」になっているのだ。それがうかがえる調査もある。